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【腕時計入門】時計をファッション化させた「スウォッチ」と「G-SHOCK」の革命

ライフ・マネー 投稿日:2021.01.12 16:00FLASH編集部

【腕時計入門】時計をファッション化させた「スウォッチ」と「G-SHOCK」の革命

 

 テレビのひな壇バラエティ番組を見ていると、タレントや芸人の腕時計がやけに目に入る。最前列のゲストの顔を映した時に、後列組の時計がちょうどいい高さにフレームインしてくるのだ。

 

 ここで時計愛好家は値踏みをする。

 

「この芸人はロイヤル オークか。ゲスト出演も多いし、だいぶ年収も上がっているのだろうか?」「CMにも出ている人なのにガジェット系ウォッチ。これはハズしとして選んでいるってことね」「このタレント知らなかったけど、カルティエを選んだってことは、そこそこ売れているんだな」などなど。

 

 

 携帯電話が誕生した頃から、時間を知るために腕時計は不要であるという考えが一般的になったが、不要だからこそ腕時計をつけるという行為は、すなわち自己表現になる。ひな壇の芸能人たちも、思い思いの腕時計をつけて自己表現をしているのだ。

 

 自分のスタイルを表現するモノとしての腕時計を強く提唱したのは、スイスの「スウォッチ」と日本の「G-SHOCK」が始まりだった。両者はデザインもコンセプトも全く異なるが、どちらも1983年にデビューし、現在も世界的に人気を集める腕時計である。

 

「スウォッチ」は手ごろなプラスティック製のクオーツウォッチで、1万円前後という価格帯とポップで華やかなカラーリング、さらにはファッション界などを巻き込んだコラボレーション戦略であっという間に人気を集める。

 

 そして限定モデルを集めたり色違いで遊んだりと、“時計をつけること自体を楽しむ” という新しい価値を提案したのだ。しかもスイスクオリティであることも重要だった。

 

 この時計の製作を指揮した故ニコラス・G・ハイエック氏は、時計の価値を「正確さ」から「ファッション性」へとパラダイムシフトさせたが、その一方でスイスメイドの「安心感」や「ブランド価値」も意識した。時計大国スイスだからこそ可能だったカジュアルウォッチだったのだ。

 

 一方の「G-SHOCK」は、“タフな時計を作りたい” という一念から生まれた腕時計だった。1983年のデビュー当時は、当時の常識からすると段違いに大きかったため日本では売れなかった。

 

 しかしアメリカで放映した、アイスホッケーのスラップショットでも壊れないというCMが虚偽ではないかという疑いをかけられたことがきっかけで話題となり、実証実験で一気に知名度を高めた。

 

 G-SHOCKはまずは兵士や消防士、警察官などの屈強な男に愛され、キアヌ・リーブスがSWAT隊員を演じて大ヒットした映画「スピード」で使用されたことで、その人気が日本にも到来した。

 

 G-SHOCKも、スウォッチと同じく他にはない個性があった。耐衝撃のための樹脂製ケースは肉厚で存在感があり、しかも樹脂は着色が容易なのでポップなカラーリングやコラボレーションも容易だった。

 

 さらにタフという個性がスケートボードやスノーボード、BMXなどのアクションスポーツ界隈やストリートファッション、ヒップホップなどの音楽などと融合し、さらに人気が高まった。G-SHOCKは時計のみならず、ユースカルチャーの一部にもなったのだ。

 

 スウォッチもG-SHOCKも、もちろんコンセプトも品質もデザインも優れていたが、何よりも “人を行動させる力” があった。カラフルなスウォッチがあれば色を生かしたファッションを楽しみたくなるし、G-SHOCKを身につけると外に出かけてアクティブに遊びたくなる。休日にG-SHOCKを愛用する理由として、「この時計を見ていたら、難しいことなど頭に浮かばないから」という経営者もいるくらいだ。

 

 ひょっとするとスウォッチやG-SHOCKは、人間を時間から解放させるために存在しているのかもしれない。1983年に誕生した2つのカジュアルウォッチは、スマートフォン時代が到来するずっと前から、時刻を示すのではなく自己自身を表現するための腕時計であったのだ。

 

 
 以上、篠田哲生氏の新刊『教養としての腕時計選び』(光文社新書)をもとに再構成しました。自分自身を語る腕時計に出合えるよう、腕時計の深淵なる世界を歴史や文化的側面から紹介します。

 

●『教養としての腕時計選び』詳細はこちら

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