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【お墓の新常識】墓じまいするなら永代供養や手元供養もあり!
ライフ・マネーFLASH編集部
記事投稿日:2021.01.28 11:00 最終更新日:2021.01.28 11:00
「先祖代々のお墓を守らなくては……」という考え方は、もう過去のもの。人生の最期はカネをかけず、子供を巻き込まない「簡素化」が主流になりつつある。気持ちよく旅立つため、いつか訪れる問題を、いまこそ考えよう。
近年、「墓じまい」をする人が増えている。厚生労働省の「衛生行政報告例」によれば、改葬件数は2008年度に7万2483件だったのが、2018年度には11万5384件と、10年間で約1.6倍にもなっているのだ。
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「かつては、『墓を継ぐ人がいない』という相談が多かったのですが、ここ3、4年は『子供に墓を継がせたくない、負担をかけたくない』という親世代からの声が増えています」
そう語る小原崇裕氏は、自ら僧籍を持ち、NPO法人永代供養推進協会の代表理事を務めている。無料で仏事相談をおこない、寄せられる相談は年間1500件にも及ぶ。
「社会環境の変化にともない、『先祖代々の墓を守らなくては』という意識は薄くなっています。
やはり多いのは、実家が地方にあり、子世代が都市部にいるケース。親が元気なうちはいいが、亡くなったあとに、子供が遠方の墓守りをしたり、お寺とつき合ったり、金銭的な負担もある。『そういった面倒や負担をかけたくない』という親が多いのです」(小原氏、以下同)
しばしば聞くようになった「墓じまい」には、さまざまな形式があるという。
「『墓じまい』と聞くとお墓がなくなる印象ですが、実際には『改葬』が、ほとんどです。これまでのお墓からお骨を取り出し、別のお墓に移す。あるいは永代供養墓や納骨堂という選択肢もあります」
徐々に広がっている「樹木葬」も、「改葬」の手段のひとつ。また、海などに遺骨を撒く「散骨葬」や、遺骨の一部をペンダントやブレスレットに納める「手元供養」という形もある。これらは墓を持たずにすみ、遺骨も処分できるので、本当の意味での「墓じまい」といえるかもしれない。
墓じまいでは、トラブルが生じることがある。国民生活センターには墓に関する相談が年間1200~1300件程度寄せられ、これは葬儀サービスの相談件数の約2倍にあたる。
墓の管理費を払わないなど檀家側に問題がある場合も多いが、寺が要求する「離檀料」が原因になっていることもある。なんと、250万円の離檀料を求められたというケースが報告されている。
「私も改葬の際のトラブルの相談を受けることがありますが、ほとんどは “お金” に関係しています。親族どうしではなく、とくにお寺とのあいだで、もめる場合が多いのです」
ここで確認しておきたいのが、改葬の手続きだ。移転先の墓の管理者から発行してもらう「受入証明書」と「改葬許可証交付申請書」。この2つの書類を、今の墓がある自治体の役所に提出して、「改葬許可証」を発行してもらう必要がある。
「改葬許可証交付申請書」には申請者や改葬先、死亡者の情報などとともに、今ある墓の管理者の署名・捺印が必要となる。書類は役所に取りに行くか、ホームページからダウンロードできる自治体もある。また、郵送で取り寄せ可能な場合もある。
これら書面での手続きにかかる費用は、数百円から1000円あまり。ただし、遺骨一体ごとに申請書・許可証が必要になる。墓の管理者が寺である場合、署名・捺印をもらう際に、高額な「離檀料」や、遺骨を墓から取り出す閉眼供養に際してお布施を要求されて、もめ事に発展することがあるというから注意しよう。
「本来、『離檀料』という言葉はなかったのですが、“改葬の際に、これまで檀家としてお世話になったお礼の気持ちとして納めるお布施” として、使われるようになりました。あくまでお布施なので、そこには、なんら法的な根拠がありません。とはいえ、納めたほうが無難です。
ただし、あくまで感謝のしるしとして、こちらが納められる金額でかまいません。もし無理な離檀料を求められたら、とにかく余計なことは言わず『今までお世話になりました』と言って可能な額を渡すこと。
お寺がどう思っても、負担できない以上、任意の金額で応じるしかありません。たしかに、高額な離檀料を要求されて断わったところ『訴える』と言われたケースもありますが、私の知る限り訴えられることはありません。
ただし、お墓の管理費を滞納してきた場合は話は別で、払うべきです。もし払えない金額であれば、分割にしてもらうなど解決方法はあります。お寺側にしても、そういう家のお墓がそのままあることは、好ましいことではありませんから」