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樺沢紫苑の「読む!エナジードリンク」コロナ禍で勝ちたいなら「目標は低く持て!」
ライフ・マネーFLASH編集部
記事投稿日:2021.04.19 06:00 最終更新日:2022.02.14 17:37
■断食で何kgやせた?
つい先日、伊豆高原の断食道場で1週間の断食をしてきました。
断食といっても何も食べないわけではなく、最初の3日間のみ固形物をとりません。4日めから玄米がゆなどの回復食となります。
これで3回めの断食ですが、今回がいちばんつらかった。特に3日めと4日めがピーク。
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まず、朝起きたとたん全身が強いだるさに襲われます。重力が2倍になった気がして、階段を上るのがやっと。頭もぼーっとして、何もする気が起きない。
じっとしているとよけいつらいので、朝6時半に起きてヨガをやり、その後は朝の散歩をして気を紛らわしました。
すると5日めくらいからみるみる体が楽になってきました。前より動きが軽快で、歩くのも軽やか。そうなると、体の中から「あともう少し頑張ろう」という気力が湧いてきます。
さて、1週間後の結果は?
体重は4.2kg減、体脂肪率は2.7%減。肥満度の指標であるBMI(ボディマス指数)は26.1に下がりました。BMI25以上が「肥満」なので、あと少しで肥満から脱出できるレベルまで来たのがなにより嬉しかったです。
断食を終えた今は、やりきったという強烈な達成感、充実感を抱いています。
心も体も軽く、明日から仕事を頑張るぞというやる気、そして非常に幸せな気持ちが満ちあふれています。今は「また半年後に挑戦したい」という気持ちでいっぱいです。
■「頂上効果」で苦しさは消える!
数日前には、「つらい」「苦しい」「こんなのは、もうイヤだ!」と思っていたのが、達成感と幸福感に包まれた状態に変化しているのは、自分でも不思議なほどです。
そして、今となっては「それほどのつらさでもなかったな」と思えてくるのです。
以前、この連載で「抜けないトンネル理論」の話をしました。
頑張っても頑張っても結果が出ない。暗いトンネルの中をずっと歩いているのに、なかなか出口が見えてこない。そんなトンネルを抜ける直前の状態がいちばんつらいという内容でした。
では、トンネルを抜けたらどうなるのでしょう。
今回の私の断食のように、あれほどつらかった経験が、「やりきった!」「乗り越えた!」という充実感や達成感に昇華されるのです。
これは登山も同じです。
山を登っている最中はものすごく苦しい。息も切れるし、体がだるくなって、疲れもたまってくる。「もうこんなことしたくない」と思うけれども、いざ頂上にたどり着いてみると、そこには素晴らしい風景が広がっている。なんという清々しさ。なんという達成感。
それが「また登山をしたいな」という気にさせてくれるのです。
何かに挑戦し、それを達成したとき、今までの苦しさは一瞬で消え、圧倒的な達成感や幸福感に包まれる。これを山の頂上まで登ったときの気分にたとえて、「頂上効果」と呼ぶことにしましょう。
「頂上効果」が現われているときに、脳内で分泌されているのが、この連載にたびたび登場する、幸福感に関わる神経伝達物質のドーパミンです。
■3つのゾーン
ところで、「コンフォートゾーン」という言葉をご存じでしょうか。
コンフォートゾーン(快適領域)とは、ふだん私たちが行動する領域、ふだん私たちが行動する場所、地域、ふだん私たちが会っている人たちです。その中で生活していると安心です。
コンフォートゾーンの外側には「ラーニングゾーン(学習領域)」があります。そしてその外側には「デンジャーゾーン(危険領域)」があります(上図)。
跳び箱5段を跳べる人がいるとしましょう。この人は、次に跳び箱6段に挑戦するのが妥当ですね。しかし、いきなり8段に挑戦しても、まず跳ぶことはできません。それどころか、転倒して怪我をする怖れもあります。
この場合、跳び箱6段がラーニングゾーンで、8段がデンジャーゾーンです。
多くの人は挑戦というとデンジャーゾーンを想像してしまうので、「難しい」「できない」「失敗したらどうしよう」と不安と恐怖が浮かんできます。
不安や恐怖を感じるとき、脳の警報装置である「扁桃体」が興奮して、ノルアドレナリンが分泌します。
ノルアドレナリンは「闘争か、逃走か」の物質とも言われ、これが分泌すると、「その場から逃げ出したい」「挑戦はしたくない」という気持ちになるのです(そういう追い込まれた状況から逃れようとして、闘争心に火がつくこともあります)。
また、不安が長期に続くと、ストレスホルモンのコルチゾールが分泌し、「やる気」を失わせます。