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樺沢紫苑の「読む!エナジードリンク」部下とうまくつき合う5つの方法
ライフ・マネーFLASH編集部
記事投稿日:2021.05.03 06:00 最終更新日:2021.05.03 06:00
(3)まかせる勇気
管理職になったばかりの人は「部下にまかせる」ことができません。部下にまかせるとクオリティが下がるし、時間もかかる。「自分でやったほうが早い」というわけです。
部下からすると「仕事をまかせてもらえない」のは、「自分の能力が認められていないから」「自分は信頼されていないから」ということになります。これが「上司不信」の原因となるのです。
多少のミスや失敗も、最初のうちは仕方がない。経験させる、練習させる、挑戦させる。まずは、「そのうちできるようになる」と部下を信頼する。「まかせる勇気」が、とても大切なのです。
仕事を分解して「ちょい難」課題に変換し、小さくまかせていく。必要に応じてアドバイス、助言を多めにしていく。「まかせる」から、部下は「その気持ちに応えよう」と頑張る。そんなポジティブな感情のキャッチボールが、信頼関係を作るのです。
(4)叱らず、ほめず、フィードバックする
部下が失敗したときは、叱ったほうがいいのか?「部下を叱ったら、次の日から会社に来なくなった」という話をよく聞きます。あるいは、部下が成功したときは、ほめたほうがいいのか? ほめすぎたら増長して天狗になるのではないか、と危惧する声もあります。
どのように、あるいは、どの程度「叱る」「ほめる」のかは、とても難しい問題です。アドラー心理学の本を読むと、「叱ってはいけない、ほめてもいけない」と書かれていますから、よけいに迷います。
私は、「叱らず、ほめず、フィードバックする」ことをおすすめします。フィードバックは、仕事の結果に対して、「悪かった点」「よかった点」の両方を見直すことから始まります。
「悪かった点」についてはその原因・理由を明確にして、改善点・修正点を洗い出し、それに基づいて次の行動に修正を加えていく。
「よかった点」は、しっかりと認め、評価する。そして、今後さらに強化するかたちで続けていけるよう、方向づけしていく。
上司の具体的な行動としては、部下に対し「悪かった点・うまくいかなかった点を3つ挙げる」「よかった点・うまくいった点を3つ挙げる」「今後すべきこと(TO DO)を3つ挙げる」という3ステップでおこなうといいでしょう。
フィードバックは、最初は部下一人ではできないので、上司と一緒におこないます。部下の行動結果に対し、部下自身が正しく分析・理解できるよう、上司が手助けします。
フィードバックと「似て非なるもの」に「反省」があります。「反省」とは、「悪かった点、うまくいかなかった点」に対して、その原因を明らかにし、修正点を考察すること。
そう聞くとフィードバックと同じようにも思えますが、こちらはネガティブな点のみに着目するので、どちらかといえば後ろ向きで、「叱りモード」になりがちです。これでは部下は、「次は頑張るぞ」という気持ちにはなかなか切り替えられないものです。
その点、フィードバックは、どちらかといえば「励ましモード」です。「悪かった点」に目は向けるものの、「頑張った点」や「よかった点」をしっかり評価してあげれば、部下のモチベーションは大きくアップするのです。
(5)ポジティブ対ネガティブの黄金比は3対1
会社で交わされる会話をすべて録音し、分析した研究があります。結果は、ポジティブな内容の会話とネガティブな内容の会話の比率が3対1以上の会社は、職場の人間関係がとてもうまくいっていたそうです。
さらに比率が5対1以上の会社になると、職場の雰囲気もよく、業績もきわめて高いという結果になったといいます。
フィードバックの視点を取り入れ、「頑張っている点」「うまくいっている点」などポジティブな面を指摘し、ネガティブ一辺倒にならないことを心がける。ポジティブとネガティブのバランスがとれたところで、部下は「次は頑張ろう!」という気持ちが湧くのです。
部下のやる気を引き出し、部下と信頼関係を築いていくことは簡単ではありません。最近の若者には根性論はまったく通じません。
今回紹介した心理学的なノウハウを活用して、戦略的に信頼関係を積み上げ、「信頼される上司」になっていただきたいと思います。
かばさわ・しおん
樺沢心理学研究所代表。1965年、北海道札幌市生まれ。札幌医科大学医学部卒。YouTubeチャンネル「樺沢紫苑の樺チャンネル」やメルマガで、累計50万人以上に精神医学や心理学、脳科学の知識・情報をわかりやすく伝える、「日本一アウトプットする精神科医」として活動
イラスト・浜本ひろし
(週刊FLASH 2021年5月11日・18日号)