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樺沢紫苑の「読む!エナジードリンク」日本人が凶暴化してきた脳科学的な理由とは
ライフ・マネーFLASH編集部
記事投稿日:2021.05.31 06:00 最終更新日:2021.05.31 06:00
■他人を責める人は「脳疲労」状態
「闘う」か「逃げる」か。コロナ禍での「闘う」を別の言葉で言い換えると、「他人を責める」「他人の悪口を言う」「怒りっぽくなる」「キレやすくなる」などの他責行動です。これらの他責行動は、うつ病などのメンタル疾患の初期にも、非常によく観察されます。
たとえば「自分が病気になったのは、会社のせいだ!」と息巻いていた患者さんも、治療が進めば元の温厚な性格に戻ります。つまり、人間はストレスに追いつめられて、扁桃体がONの状態になってしまうと、もともと温厚だった人も攻撃的になるのです。
あるオリンピック開催に関するネット調査では、「東京オリンピック中止」の意見の人が80%に達したといいます。これは、扁桃体の興奮による「逃げる」の表われかもしれません。
「待つ」「様子を見る」ということができなくなり、今すぐ「結論」「結果」を出したくなる。すぐに白黒をつけないと気がすまない「0−100(ゼロヒャク)思考」が強まった結果であるともいえるでしょう。
■扁桃体の興奮を鎮める方法
扁桃体の興奮が持続すると、ストレスホルモンのコルチゾールの分泌量が上昇し、メンタルや身体的な不調を引き起こして、「うつ病」の原因になります。衝動性が強まり、最悪の場合は「自殺」の可能性も高まります。そういう事態を防ぐためにも、ここで扁桃体の興奮を鎮めて、脳の暴走を抑える方法を4つ紹介しましょう。
(1)言語情報を出入力する
脳に言語情報が出入力されると、理性・理論・思考の中枢である前頭前野が、扁桃体の興奮を抑制します。出入力とは、具体的には「安心できる情報を知る」「悩みや心配を人に話す(ガス抜き)」「不安や怒りを紙に書き出す」「日記をつける」などの行為です。
つまり、「知る」「話す」「書く」など言語的なインプット&アウトプットによって、脳は「安心」に向かっていくのです。
(2)オキシトシンを増やす行動をとる
愛とつながりのホルモンであるオキシトシンが分泌されると、扁桃体は鎮静します。オキシトシンには、非常に強いリラックス効果、やすらぎ・癒やしの効果があるからです。
オキシトシンを出すためには、夫婦・親子・パートナーなど親しい人とのコミュニケーション・スキンシップ・楽しい会話、ペットとの交流、親切行為・他者貢献・ボランティア活動などが有効です。誰かに接して癒やされる。そんなときに、オキシトシンが分泌されます。
コロナ禍においては、人と接することが制限されていますので、オキシトシン不足の人が増えていることが考えられます。オンラインでもいいので、人と積極的にコミュニケーションを図るようにしましょう。
(3)リラックスする時間を持つ
「扁桃体の興奮」とは、言い換えると「脳の興奮」「戦闘モードの脳」です。なかでもスマホいじりやゲームなどの視覚系の娯楽は、脳を興奮させ、戦闘モードに切り替えます。
のんびりとリラックスした状態になれば、戦闘モードは解除されます。たとえば、ゆっくりお風呂につかる、あるいは、何もしないでボーッとするのもいいでしょう。
たとえば「昼休みに公園のベンチに座ってボーッとする」など、一日のうちに10分間でも「のんびり」「ゆっくり」する時間を持ちたいものです。
(4) 睡眠・運動・朝散歩
睡眠不足の状態では、扁桃体はより興奮しやすくなります。扁桃体が興奮するとぐっすり眠れないので、さらに脳が疲労するというサイクルを繰り返します。この悪循環に陥らないよう、7時間以上の睡眠をしっかりとることです。
また、運動はコルチゾールの分泌量を低下させます。つまり、運動によって扁桃体が引き起こすストレス反応を減じることができるのです。
簡単にできる運動ということで、私がおすすめしているのが「朝散歩」。朝起きてから1時間以内に、5~15分程度、太陽の光を浴びながら散歩することによって、脳内物質・セロトニンの分泌が活性化されます。
セロトニンは「脳の指揮者」と呼ばれるように、ノルアドレナリンやドーパミンなどのほかの脳内物質の分泌量を調整しており、ノルアドレナリンの分泌量を低下させ、不安を減じるのです。
不安を減らし、リラックスした毎日を送ってください。
かばさわ・しおん
樺沢心理学研究所代表。1965年、北海道札幌市生まれ。札幌医科大学医学部卒。YouTubeチャンネル「樺沢紫苑の樺チャンネル」やメルマガで、累計50万人以上に精神医学や心理学、脳科学の知識・情報をわかりやすく伝える、「日本一アウトプットする精神科医」として活動
写真・福田ヨシツグ イラスト・浜本ひろし
(週刊FLASH 2021年6月8日号)