今回のDaiGo氏の事案を、多くの人は「人ごと」ととらえて、SNSなどに好き勝手に書き込んでいます。しかし、「人ごと」などではまったくありません。あなたも十分に注意したほうがいいでしょう。
心の中で思っていることは、非言語的に相手に伝わってしまう。
このことは絶対に忘れないでいただきたい。
たとえば、飲み会の場でことあるごとに「上司の悪口」を口にしているAさんは、上司の前では気に入られようとお世辞を言います。しかし、このときAさんの心の中にある「あなたのことが大嫌い!」という気持ちは、非言語的に上司に伝わります。
誰かの悪口を言えば言うほど、「その人のことが嫌い」という情報が脳に深く刻み込まれる。それによって、Aさん自身まったく意識していなくても、「嫌い」という感情が、Aさんの非言語メッセージにどんどん表われてしまうのです。
上司は、そんなAさんの「嫌い」という非言語メッセージを受けて、「いけ好かない奴」とAさんに対するネガティブな印象を強くします。これを、心理学では「悪意の返報性」と呼びます。
「自分ばかり上司からやっかいな仕事を振られてしまう」「自分だけ上司に冷たくされる」という相談が、私のYouTubeによく寄せられますが、その理由として、この人たちが上司に対し、「あなたなんか大嫌い!」という非言語メッセージを発していることが考えられるのです。
「悪意の返報性」に陥らないためには、まず大前提として「嫌いと思っている人の悪口を言わない」こと。そして、嫌いな人にこそ感謝の言葉を述べたり、親切にすること。人は、相手からポジティブな感情を向けられると、ポジティブな感情を返したくなる。これを「好意の返報性」と呼びます。
悪意と敵意を振りまいて敵を増やすのではなく、感謝と親切を増やし仲間や応援してくれる人を増やす。それが、人間関係がうまくいくコツです。
かばさわ・しおん
樺沢心理学研究所代表。1965年、北海道札幌市生まれ。札幌医科大学医学部卒。YouTubeチャンネル「樺沢紫苑の樺チャンネル」やメルマガで、累計50万人以上に精神医学や心理学、脳科学の知識・情報をわかりやすく伝える、「日本一アウトプットする精神科医」として活動
イラスト・浜本ひろし
(週刊FLASH 2021年9月7日号)