パソコンやスマホなど、いまや生活に欠かせないものとなったデジタル製品。多くのデータや個人情報が記録されているが、所有者が亡くなってしまうと、「パスワードが解除できない」など、遺族が困るケースも少なくない。
そんな「デジタル遺品」に関するトラブルは増加傾向にある。デジタル遺品サポートサービスをおこなっている日本PCサービス株式会社に寄せられた相談件数は、昨年9月から今年7月までに306件となり、前年同時期より30%も増加しているという。
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「もっとも多いのが『パソコンが開けない。パスワードを解除してほしい』という相談で、全体の約7割を占めます。『生前に撮影した家族写真を見たい』という場合もあれば、『亡父がネットで決済していた定額サービスを止めたい』という切実な理由もありますね。
また、パソコンをリサイクルしたり相続人が再利用するとしても、中のデータを一度確認することを推奨します」(日本PCサービス・沖祐生さん)
どのようにしてパスワードを解除するのか。本誌は、フリーライターの兄が病気で寝たきりの状態になってしまったという、Aさんに協力してもらい、兄のパソコンのパスワード解除を体験してもらった。
「意思疎通ができない状態なので、兄の複数のPCがそのままなんです。ライターという職業柄、どんなことを書き残していたのか、知りたいんです」(Aさん)
Aさんの兄が使用していたのは、Windows10のノートパソコンや、古いMacBookなど。それらを、都内に店舗を構える日本PCサービス直営の「ドクター・ホームネット」に持ち込んで、実際の作業を見せてもらった。
「OSがWindows7までのものであれば、ほぼ100%解除できます。8以降だと、PCにログオンするためのアカウントが『ローカルアカウント』なのか、『Microsoftアカウント』なのかによって違ってきます」
と説明するのは、同店の山中浩平さん。Windows10のパソコンのパスワード解除作業を開始すること約5分。あっさりとパスワードが解除されてしまった。
「詳しくは説明できませんが、このUSBに入っている特殊なソフトを使うことで、パスワードが解除されます。このPCはローカルアカウントなので解除できましたが、Microsoftアカウントの場合、解除はほぼ不可能です」(山中さん)
一方、古いMacBookは電源自体が入らず、今回は解除することができなかった。
「ハードディスクなどを取り出して、データを抽出することは可能です。ただし、その場合は費用が高額になります。また、スマホはセキュリティロックがかかっている場合が多く、解除はかなり難しいですね」(同前)
今回は店舗に持ち込んだが、訪問による自宅での作業も可能だ。ドクター・ホームネットの「パスワード解除パック」は「訪問」「環境・トラブル診断料金」「パスワード解除作業」がセットで、料金は2万2000円(税込み)。
「まず依頼書などの書類にサインをいただき、身分証明書の確認をします。さらに、デジタル遺品の場合は故人と依頼者の関係などを確認するため『戸籍謄本』『死亡診断書』『依頼者の運転免許証または保険証』の3点が必要です。
次にパソコンの状態を確認し、お見積もりを出します。それでOKであれば、作業に移ります。早ければ30分程度で解除できます」(同前)
だが最善の策は、遺族が困ることのないように、あらかじめ準備しておくことだ。
「銀行口座と同じように、エンディングノートにIDやパスワードなど、デジタル関連の情報も書き残してもらいましょう」(沖さん)
デジタル遺品のトラブルを防ぐ方法は、意外にもアナログな「メモ」なのだ。今すぐ実家の両親の “デジタル資産” を確認すべし。
<残しておきたい「デジタル資産メモ」リスト>
★パソコンのログインパスワード
★Microsoftアカウント・AppleID
★スマホのパスワード
★インターネット回線のID・パスワード
★SNSのアカウント、ID・パスワード
★ネット銀行、株取引サイトのID・パスワード
★動画配信、通販サイトなどのID・パスワード
(週刊FLASH 2021年9月28日・10月5日号)