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「トマト銀行」誕生に参画した男がパチンコ依存から立ち直って

ライフ・マネー 投稿日:2017.02.02 17:00FLASH編集部

「トマト銀行」誕生に参画した男がパチンコ依存から立ち直って

『写真:AFLO』

 

 グローバルアイディアル株式会社の取締役・石川さんの名前「万汰郎(まんたろう)」は、二十数年前に落ち込んだときに自分でつけた。名前の持つ力を知っているだけに、親しく呼んでもらえるように通名にしている。ご本人は名前のイメージとは違い長身痩軀、理路整然とした話と、柔和な笑顔が印象的だ。それにしても、名前を変えたくなる人生とはどんなものか?

 

「基本的に私の人生は行き当たりばったりでした。何かに狙いを定めて進むというものではなかったので、その時々の流れの中で何回も転機がありました」

 

 万汰郎さんの職業遍歴は多彩だ。まずは大学卒業後、家業の菓子店を継ぐために洋菓子店でパティシエの修業を3年間。しかし「物と向き合うだけで人間関係が広がらない仕事は向いていない」と、後のことも考えず辞めた。

 

 さすがに親に申し訳ないので経営を学んで恩返ししようと思い、求人雑誌で経営コンサルタント会社を見つけ面接を受けた。アルバイト採用だったが、これが大きな転機となった。

 

 菓子作りとは別次元のコンピュータを使う世界。当初は休みなしで、年に4800時間、学び働いた。結局その会社には12年間在籍した。

 

「コンサル会社で30歳ぐらいのときに出会ったのが岡山の山陽相互銀行です。当時は経営変革手法のC I(※)が盛んで、私と社長の2人で集中して岡山に通った。その結果が1989年のトマト銀行への大変身です。

 

 このネーミングのインパクトはものすごかった。連日マスコミが取り上げました。その渦中に自分がいるということが信じられなかったですね。夢半分、現実半分。トマト銀行はCI発表後、一カ月間で前年一年分の新規口座が増えました。当時、銀行業界で、合併の手法以外でこんなに伸びた例はありませんでした」

 

 この成功は31歳の万汰郎さんに取締役の座を与えた。しかし、業績悪化が徐々に始まる。数年後のバブル崩壊とともに経営相談の内容が変わった。CIの手法は身につけたが、リストラや給与制度作りなどの新たなニーズに対応できなかった。利益は上がらず、新社長の経営方針とも合わなかった。会社を辞めたのは37歳のときだ。

 

 悪いことに、辞める前に取締役の年収で借りられる限度額いっぱいの住宅ローンを借りてしまい、その支払いに追われた。独自にコンサルタントの仕事を始めたが、3年の間にジリ貧となった。パチンコで生活したのはこの時期だ。

 

「ローンの支払いが苦しくて自暴自棄になり、パチンコ屋に入ったのがきっかけでパチンコ魂に火がつきましたね。毎日台の出玉をチェックしてデータ化。それで台の特徴を摑み、年に1000万円近く稼ぎました」

 

 しかし、どんなに稼いでもパチンコ台とにらめっこの毎日では先が見えない。騒音とタバコの臭いにも閉口した。

 

 それで無頼の生活から足を洗ったが、住宅ローン破産が迫っていた。3年の間にローンの利率は借りたときの約5%から1%に下がっていた。なんとか借り換えをしたい。銀行を駆けずり回って、サラリーマンに戻ることを条件にどうにか認めてもらい、40歳のとき食品メーカーの経営戦略室長として就職した。

 

 だが年収は3年間据え置かれた。この間、実家の資金援助もあり、ローン破産だけはなんとか免れた。

 

「最大の転機は、保険業界の今の会社を選んだ43歳のときですね。きっかけは家内と出会って結婚したいと思ったからです。そのためには年収を上げて家計を変えるしかない。面接時に担当者が言った『この業界の収入は青天井』に反応しました」

 

 仕事の内容も従来型の生保営業ではなく、お金のトータルコンサルティングで、効果的な保険商品を提案、販売するものだった。これまでの経験が生かせると思った。

 

 住宅ローンで苦しんだ万汰郎さんが、今ではファイナンシャルアドバイザーとして資産運用の相談に応じている。金利とコストはより安く、分不相応な物件は絶対に買わない。それが常にアドバイスの中心にある。

 

「この仕事は本当に気に入っていて、生涯続けようと思っています。子供がまだ11歳なので、僕にはセカンドライフはありません。さまざまな業界の方々とシナジー(相乗効果) を生み出しつつ、お客様にも家族にも万汰郎でよかったと言ってもらえる人生にしていきたいと思っています」

 

※ CI=コーポレート・アイデンティティ。顧客が共通したイメージで企業理念を認識できるように、社会に印象づける活動のこと

(週刊FLASH 2017年2月14日号)

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