■道を歩いている人はみんなお手伝いさん
東京では、世田谷を見てもわかるとおり、「駅近」が評価され、「駅遠」が敬遠され始めた。では、地方はどうなっているのか。名古屋市内では、代表的な高級住宅街である東区白壁、千種区覚王山(ちくさくかくおうざん)が上昇している。
この2エリアに並ぶセレブエリア・八事(やごと)地区にある不動産業者に話を聞いた。
「八事は典型的な第一種低層住居専用地域で、もともと価格が高いうえ、なかなか売却物件が出ません。田園調布などのように協定があるわけではないのですが、住民は相続税を払って、建て替えたりメンテナンスをしたうえで、代々維持しつづけているのです」
兵庫県神戸市東灘区岡本も、名高い高級住宅地だ。岡本の基準地価は、県内で不動のNo.1だったが、2021年、JR芦屋駅前に位置する芦屋市大原町に取って代わられた。
その芦屋市の真骨頂が六麓荘町(ろくろくそうちょう)だ。市の条例で、宅地は400平方メートル未満には分割できない。ただ、最寄りの阪急苦楽園口(くらくえんぐち)駅から約30分も歩くので、利便性はきわめて低い。
だが、神戸市のあいき不動産鑑定代表の土田剛司氏(56)は一笑に付す。
「界隈を歩いている人はみんなお手伝いさんですよ。住民は運転手つきの車で移動するから、駅までの距離など気にしないんです。物件の空きが出るのを待っている “成功者” も多いですね」
西宮市内にある甲子園や甲陽園などの高級住宅地を総称し、「西宮七園」というが、六麓荘町と接する苦楽園界隈は下降気味だった。
「このところ、豪雨や土砂災害が全国的に続いていることから、防災意識が高まり、敬遠されているのかもしれません」(土田氏)
大阪に目を転じれば、変わらぬ人気の北摂地域でも明暗が分かれた。関西で成功した芸能人が多く暮らす箕面市百楽荘(ひゃくらくそう)ががぜん伸びている一方、高槻市南平台はかなり下がり気味だ。地図で確認すれば一目瞭然。駅からの距離が相当あるのだ。
※2021年1月1日時点の公示地価、7月1日時点の基準地価をもとに作成
取材/文・鈴木隆祐
写真・桐島瞬、梅基展央
(週刊FLASH 2021年11月2日号)