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食堂のおばちゃんの人生相談「父がアル中状態…言うことを全然聞かない」
ライフ・マネーFLASH編集部
記事投稿日:2021.11.08 11:00 最終更新日:2021.11.08 11:00
「食堂のおばちゃん」として働きながら執筆活動をし、小説『月下上海』で松本清張賞を受賞した作家・山口恵以子。テレビでも活躍する山口先生が、世の迷える男性たちのお悩みに答える!
【お悩み/トマトさん(37)会社員】
建設業で力仕事をしていた父が60歳で定年退職した後、毎日朝から酒を飲み、アル中状態です。息子の私と母の言うことを全然聞きません。
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【山口先生のお答え】
ギクッ!? トマトさんのお父さんって、私の分身かも……? そうなんですよ。長年身を粉にして働いてきて、退職した途端、毎日が日曜日。もう明日3時半に起きなくてもいい。そしたら安心して酒呑みたくなりますよ、ねえ。
今のところ、私が毎日「酒とバカの日々」にならずに済んでいるのは、ひとえに原稿の締切りがあるからです。現在執筆中の作品(時代小説です)を含めて、長編をあと3作書かないといけないんです。松本清張賞受賞後、編集者に書くとお約束しましたから。これは信義の問題なので、絶対に書きます。だから酒ばっかり呑んでられないんです。煙草吸いながら小説書くことは出来ますが、酒呑みながらは書けません。頭がパーになりますからね。
トマトさんのお父さんの場合、無趣味なので酒に走ると書いておられますが、確かにそういう面はあるでしょう。 ただ、60歳まで体を張って働いてきたら、趣味なんか持つ余裕がなくても仕方ないと思うんですよ。
よく「定年になったら趣味を持って第2の人生を楽しみましょう」という言葉を目にしますが、趣味というのは本人の中に興味や関心が生まれて、初めて成立するものです。若い頃から興味があったことなら、定年後に趣味として始めても続くでしょうが、ただ「趣味でも持つか」程度の気持ち、仕方ないからやろう……では、続かないと思います。
でも、トマトさんのお父さんが今の酒浸りの生活を楽しんでいるかといえば、違うと思います。働いていた頃、仕事を終えてから呑んでいた酒の味が甘いなら、今は苦い味がするでしょう。職を退いた虚しさ、寂しさを紛らす術が、酒しかないから呑むんです。
今現在、お父さんがアルコール依存症に陥っているなら、これは素人の手には負えません。すぐに病院に入院させるべきです。
そして、アルコールと縁が切れて戻ってきたら、あるいはまだ依存症になっていないなら、奥さん、つまりあなたのお母さんと一緒に「楽しんで出来る」何かを見つけましょう。ウオーキング、水泳、山歩き、社交ダンス、料理、俳句、写真、書道etc……地区の文化センターには趣味のサークルが山ほどありますから、2人で一緒に出来ることが、ひとつくらいは見つかるのではないでしょうか。
大切なのは「仲間」を作ることです。それはトマトさんのお母さんでもいいし、サークルの会員でもいい。一緒に楽しみを分かち合える自分以外の人、です。一人でやっていると、さまざまな原因で途中でやめてしまうことが多いのですが、仲間がいると、仲間に会える楽しさに出かけていって、結果、長く続けられたりしますから。
人間って、読んで字のごとく、人の間で生きるものなんです。
やまぐちえいこ
1958年、東京都生まれ。早稲田大学文学部卒。就職した宝飾会社が倒産し、派遣の仕事をしながら松竹シナリオ研究所基礎科修了。丸の内新聞事業協同組合(東京都千代田区)の社員食堂に12年間勤務し、2014年に退職。2013年6月に『月下上海』が松本清張賞を受賞。『食堂メッシタ』『食堂のおばちゃん』シリーズ、そして最新刊『夜の塩』(徳間書店)が発売中
( SmartFLASH )