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肥満の人がなかなか痩せない理由は「インスリン抵抗性」にあった

ライフ・マネーFLASH編集部
記事投稿日:2021.11.23 16:00 最終更新日:2021.11.23 16:00

肥満の人がなかなか痩せない理由は「インスリン抵抗性」にあった

 

 インスリンは人間の体の中のすい臓という臓器のβ細胞というところから分泌されているホルモンである。様々な役割があると考えられているが、その1つは体内でのエネルギーの蓄積である。

 

 インスリンが分泌されると、体の中の反応は、エネルギーを溜め込む方へシフトする。そして空腹時にはインスリン分泌が減り、体は体内に溜め込んだエネルギーを使って活動する方向へシフトする。

 

 

「インスリン抵抗性」という状態になると、そのインスリンの様々な臓器や組織に対する効果が非常に低下する。そうすると、何とかインスリンが効くように、すい臓は頑張ってインスリンの分泌を増やし、血液の中のインスリンが非常に多くなる。これが高インスリン血症である。

 

 高インスリン血症だとインスリンがたっぷりあるので、体はどんどんエネルギーを溜め込む。つまり太る。インスリンが出れば出るほど太ると思ってもよい。

 

 インスリンは食事や間食のたびに分泌される。糖質を食べれば必ず分泌されるし、タンパク質を食べても少し分泌される。糖尿病の人では、タンパク質を食べたときでも、健康な人より多くのインスリンが分泌される場合もある。

 

 また、タンパク質の種類によっても、インスリン分泌量は異なるようである。牛乳を材料とするホエイタンパク質では、卵のタンパク質の2倍インスリンが分泌される。

 

 一方で、肥満の原因と一般的には思われている脂肪(脂質)を食事で摂っても、インスリンはほぼ分泌されない。つまり、脂肪を食べても、それが原因で太ることはない。同時に糖質を食べるから太るのである。脂肪はとんだ濡れ衣を着せられてしまっていたのだ。

 

 太るか痩せるか、というのはこのインスリンが決めているといっても過言ではない。

 

 タンパク質によるインスリン分泌は、タンパク質を筋肉などにするためには必要である。しかし、糖質によるインスリン分泌は、糖質を体内の脂肪に変えてしまう。糖質を摂れば摂るほど太るのである。

 

 糖質過剰摂取を続けていると、インスリンがどんどん分泌される。血液の中のインスリンがつねに高い状態になると、様々な臓器や組織でインスリンが効きにくくなる。

 

 インスリンが臓器などに届けられたときに、どれほどインスリンの効果があるかを示す言葉を「インスリン感受性」という。

 

 非常に効きやすければインスリン感受性が高く、少量でも大きな効果が得られる。逆にインスリン感受性が低ければ、なかなか効果が得られず、大量のインスリンが必要になる。「インスリン感受性が低い=インスリン抵抗性が高い」と考えればよい。

 

 インスリン抵抗性は全身に起きることもあれば、それぞれの組織や臓器に起きることもある。全身のインスリン抵抗性は測定できても、それぞれの組織や臓器の局所のインスリン抵抗性は測定できないし、自分では全く気がつかない。だから、気がつかないうちに様々な症状や病気が進行していくのである。

 

 インスリン抵抗性を下げるには、インスリン分泌をできる限り減らさなければならない。つまり糖質をできる限り減らすことが最も重要となる。

 

 肥満によりインスリン抵抗性が高くなったために、インスリン分泌が増加している、と考える人もいる。しかし順番は、インスリン分泌増加が先で、それにより肥満が起きる。

 

 ということは、肥満を治療するのではなく、インスリン過剰分泌を改善しなければ、根本的には解決しないことになる。つまり、「痩せてください」というアドバイスや指導は的を射ていない。

 

「インスリン分泌を増加させる食事をしないでください」というのが正しい。つまり「糖質制限をしてください」と医師や栄養士はいうべきなのである。

 

 肥満の人は、すでにインスリンが効きにくく、血液の中のインスリンが大量であるため、体の脂肪を燃焼しづらい状態である。運動しても脂肪の燃焼が起きにくい。

 

 スポーツジムなどに痩せることを目的として通っている人もいるだろう。何カ月続けても、何年続けても、なかなか痩せない人が多いのではないかと思う。

 

 痩せないあなたは、運動の前に糖質を摂っているのではないだろうか。また、もしかしたら、運動中や運動後には糖質入りのスポーツドリンクを飲んでいるのかもしれない。

 

 太りすぎの人や肥満の人では、いくらスポーツジムに通って運動しても、それだけで痩せることはかなり難しい。そもそも運動で消費するエネルギー量は非常に少ない。運動した帰りにハンバーガー1個でも食べれば、プラスマイナスゼロか、ひょっとしたらプラスになっているかもしれない。

 

 肥満の人がなかなか痩せない理由は、簡単に言えば、糖質を摂りすぎているから、と結論づけられるのだ。

 

 

 以上、清水泰行氏の新刊『肥満・糖尿病の人はなぜ新型コロナに弱いのか~「糖質過剰」症候群II~』(光文社新書)をもとに再構成しました。糖質過剰摂取が新型コロナをはじめ、数多の疾患の原因となる理由を、多くの最新研究を交えて詳述します。

 

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( SmartFLASH )

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