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「三転び四起き」の整体師人生、次は人材育成を目指す

ライフ・マネーFLASH編集部
記事投稿日:2017.03.16 17:00 最終更新日:2017.03.16 17:00

「三転び四起き」の整体師人生、次は人材育成を目指す

(写真:長田洋平/AFLO)

 

 宮本晋次(48)さんが整体の道に入ったのは、導いてくれた柔道整復師の師匠がいたからだ。出会いのきっかけは椎間板ヘルニアと診断された腰痛。腰の激痛は足の痺れ、首の痛みに繫がり、さらにはひどい不眠から精神的にも不安定になった。さまざまな治療を受けたが、いっこうに改善しなかった。

 


 そんな折、出張治療のみで治療院は持たない先生を紹介された。初回の治療で驚くほど痛みが改善した。16歳のときで、それが師匠との出会いだった。



「当時は父親との仲が悪く、自分の殻に閉じこもり気味で、精神的にもおかしくなっていました。先生は理想の父親像で、親身に話を聞き、温かく包んでくれて、肉体的、精神的にも解放され徐々に回復しました。先生の整体に対する取り組みに触れ、こんなに素晴らしい仕事があるのだと思いました」

 


 高校2年生のとき、宮本さんは師匠から「お前は将来、何をしたいんだ?」と尋ねられた。「自動車整備士の学校へ行こうと思っている」と答えると、師匠は「同じなおすなら人間を治さないか? 私の技術をお前に伝えたい」。



 その場で弟子入りを願い出た。それから高校卒業と同時にカイロプラクティックの専門学校に2年間通う一方で、師匠から一子相伝の技術を伝えられた。カイロの施術法は日々進歩しているが、宮本さんの技術とマインドのルーツは師匠にある。



 ところで、整体と呼ばれるものには各種ある。資格で分けると、国家資格の鍼、灸、あん摩、指圧、マッサージ、柔道整復と、民間資格の整体、カイロプラクティック等々になる。国家資格を取るには専門学校で3年以上履修したうえで、国家試験に合格しなければならない。



 国家資格のある整骨院では病気によっては健康保険が適用され、一回の治療費は数百円だが、民間資格の整体院などは10分ごとに1000円がだいたいの相場である。



 ただし最近は業界のディスカウント化が激しい。もちろん資格や価格で技術の優劣が決まるわけではない。ただ民間資格の場合は、簡単に開業ができるためトラブルも絶えない。そんな民間資格を持つ宮本さんは、専門学校卒業と同時に20歳で開業したのである。



「最初の開業は社会経験や経営経験がまったくないのに、当時は、オレにできないものはない、一度来れば絶対リピーターになる、全員完璧に楽にしてみせる! と超天狗になっていました。マーケティングなんてまったく考えずに、駅から徒歩20分、車も人も通らないような場所に店を開きました。結局、半年もたずに閉院です。以後も2回、都合3回開業しては閉院を繰り返しました」



 整体院を維持するのは容易ではない。まして今日のようにどこの駅前にも何軒もあるような状態ではなおさらである。整体業界の廃業率は、開業後1〜2年で90%以上にのぼるという。



「2010年末に日本橋の人形町で4回めの開業をしました。知人に協力していただき、経営のノウハウを一から叩き込まれました。40歳を過ぎていましたが感覚だけで生きていたので、社会性や計画性もなく、勉強は非常に苦しい経験となりました。でも、これが転機になった。経営のなんたるかが少しわかり、おかげさまで店は7年めを迎え、昨年は新丸の内ビル内に新店舗もオープンしました」



 転機はもうひとつあった。若いとき、来院された老人を施術した際に感覚的な違和感があり、脳の病気を疑ったのだ。しかし、「病院で診てもらったらどうか」と言わず、次回でいいだろうと帰してしまった。その方は次の予約日に来なかった。亡くなったのだ。伝えるべきことを言わなかったことで、死なせてしまったと後悔した。

 以来、整体は「人の命を預かる仕事」であるということを肝に銘じている。しかし、業界の現況はけっしてそうではない。


そこで「本来の使命感に立ち戻ろう」と、整体師の「原点回帰」を強く訴えている。



「技術もなければマインドもない。働いている意義も感じていない。お客様の痛みの根源改善や、対価をいただくことの責任すら考えていない整体師が多い」



 そう嘆く宮本さんは、業界の回帰は結局「人」にかかっていると考え、人材育成を目的とした「社団法人全骨骨格矯正師協会」設立の準備を進めている。そのための手段として、自分自身を広く知ってもらおうと、テレビやラジオへの出演、本の出版、セミナーの講師等々を精力的におこなっている。



 理念に共感してくれる同志や仲間を増やすことが、業界を変える第一歩との思いからだ。どうやら次の転機が近づいているようだ。


(週刊FLASH 2017年3月28日、4月4日号)
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