猫といえば、「かわいい」「ほっとする」という癒やしのイメージが強くあります。実際に猫を抱っこしたり、なでたりすると、「ほっこり」とした気持ちになり、強烈な「癒やされ感」を味わうでしょう。
人は猫に癒やされますが、そこには間違いなく理由があります。今回は、「なぜ人は、猫に癒やされるのか?」ということを、脳科学の観点から解説したいと思います。
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(1)癒やし&ストレス解消効果
猫や犬をなでるとオキシトシンが分泌されます。オキシトシンは幸福物質のひとつで、「愛・つながりのホルモン」。恋人とハグしたとき、赤ちゃんを抱っこしたときなど、人と人とのボディコンタクトで大量に分泌されますが、人だけではなく動物との接触によっても分泌されます。
猫をなでるととても癒やされた気持ちになり、また猫のほうも気持ちよさそうな表情をします。その瞬間、人間と猫との双方でオキシトシンが分泌されるのです。
「孤独」は「孤毒」。孤独な人は、そうでない人と比べて5歳寿命が短い。孤独は「1日15本の喫煙」に匹敵するほど健康に悪いことが知られていますが、その理由はオキシトシンが分泌されないからです。
オキシトシンは強いリラックス効果を持ち、血圧や心拍数を低下させる、非常に健康によい物質です。
また、猫や犬をなでると、オキシトシンの分泌とともに、ストレスホルモンのコルチゾールが低下することも報告されています。つまり、実際にストレスが減じるわけです。
一人暮らしで恋人やパートナーもいない、毎日が孤独という人は、猫を飼うことで孤独による健康の害を減じてくれる、ということになります。
たんに「癒やされた」という自覚症状だけではなく、健康増進にも役立つのです。
(2)即効性
「毎日が楽しくない」「自分の人生は幸せとはほど遠い」とこぼす人は多くいますが、そんな不幸な人でも、簡単に幸せになる方法があります。それは、猫を20秒抱きしめればいいのです。
人と人との研究ですが、約20秒ハグするだけでオキシトシンが分泌することがわかっています。動物を抱っこしても、ほぼ同じ効果が期待できます。たった20秒間、猫を抱っこするだけで、オキシトシンが分泌されるのです。
「そんなことで幸せになれるか!」と懐疑的な人もいるでしょうが、恋人同士が抱き合って出るオキシトシンも、動物を抱っこして分泌されるオキシトシンもまったく同じ物質です。
脳で起きている反応はまったく同じですから、「恋人がいない」「友達がいなくて寂しい」という人は、猫に癒やしを求めてはいかがでしょうか。
(3)脳が活性化
猫とのふれあいが、脳を活性化するという研究があります。「餌・水を与える」「おもちゃで遊ばせる」「猫に対して指示命令を出す」「なでる、ブラッシングする」など4つの異なる方法で猫とふれあってもらったところ、いずれの方法でも脳の前頭前野の活動性が高まったといいます。
つまり、猫とふれあうことは、癒やしの効果だけではなく、脳を活性化する効果も期待できるのです。
そして、特にこの4つの方法のうち「猫に対して指示命令を出す」ときに、最も脳機能の活動性が高まったのです。
猫の行動というのは、「ツンデレ」とも呼ばれて、飼い主が思ったようには動いてくれないものです。つまり、猫に指示を出しても、そのとおりにはならないので、「じゃあどうしよう」という工夫や「じれったい」という感情が、猫への興味や関心を高めるのでしょう。
「ツンデレ」というのは、猫と犬との大きな違いとなりますが、「従順な犬」とは異なり、「思うようにならない」からこそ、より引き寄せられてしまうわけです。