今年度から高校での「金融教育」がスタートして1カ月。これまでも家庭科の授業で家計マネジメントや生活設計について触れられてはいたが、今後は、新しい指導要領に基づき、より詳しい内容の金融教育がおこなわれることになる。
特に「投資信託」「債券」「株式」など、資産形成に向けての具体的な内容が盛り込まれているのが、大きな変化だ。
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本誌は、新しい高校の教科書「家庭基礎」を入手、その内容をフィナンシャルプランナーの丸山晴美氏に吟味してもらった。
「私にもこの春、中学に入学した息子がいますので、気になる話題でした。教科書を見て、まずは学生が社会に出て生活を営むための情報が幅広く網羅されているという印象を持ちました。
社会に出るまでにこれらの情報が高校生に入ることはとても望ましいことです。この内容をしっかり理解して、身につけることができれば、親としてもひと安心できる内容です」(丸山氏)
この4月から成年年齢が20歳から18歳に引き下げられ、18・19歳でも親の同意なしでさまざまな契約ができるようになった。若者を狙った消費者トラブルの増加が懸念されているが、教科書には悪質商法や詐欺の例、ネットショッピングやキャッシュレス決済の注意点などが盛り込まれている。
現代の高校生はこんなことまで学ぶのかと驚くほど、内容は盛りだくさんだ。
その一方、丸山氏はこうも指摘する。
「『金融教育』に関しては、よくまとまっていると思います。ただ、高校生が限られた時間のなかでこれらをどれだけ理解できるのか、若干の不安を感じます」
200ページ以上ある教科書のなかで、金融に関する箇所はわずか10数ページ。「命の次に大事」なお金について学ぶには、ややボリュームが足りないとも思える。
「教科書には情報を凝縮させてありますが、これらをひとつひとつしっかり解説していると、かなりの時間を要する内容です。授業でそれだけの時間が取れるのか。
また、教える側(教師)のレベルはどうなのかも心配です。教師自身の金融リテラシーが低ければ、ただ教科書を読むだけになってしまうでしょう。できれば、ワークシートやロールプレイングなどでより実践に近づけて考えさせることが望ましい。
また、親御さんも一度教科書を読んでみるといいでしょう。家計や生活設計などについて話し、子供と情報を共有していくことで、自然と金融リテラシーを高めていくことができると思います」(丸山氏)
そもそも金融の教育を家庭科の一部に落とし込むことに関しては、疑問の声も少なくない。ひとつの教科として教えるべきだという意見もある。諸外国と比較して著しく低いとされる日本人の金融リテラシー。まだまだ踏み込む余地はあるようだ。
( SmartFLASH )