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樺沢紫苑の『読む!エナジードリンク』なぜ「自分は大丈夫」という人ほど騙されるのか?
ライフ・マネーFLASH編集部
記事投稿日:2022.05.16 06:00 最終更新日:2022.05.16 06:00
詐欺の被害に遭う人が後を絶ちません。警視庁のデータによると、振り込め詐欺をはじめとする特殊詐欺の被害は減少傾向にあったものの、2021年の1年間は約1万5000件と、件数として4年ぶりに増加したことがわかりました。また、神奈川県警の調べによると、神奈川県内の今年1~3月の被害額は4億円と、前年の4倍にも及んでいるといいます。
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詐欺の手口が巧妙になってきているのは事実ですが、銀行に行けば注意を呼びかけるアナウンスが常に流れており、テレビのニュース、ワイドショーでも、新しい手口などを紹介する特集がよく放送されています。
詐欺を防ぐための情報が、これほど私たちの身のまわりにたくさんあるというのに、どうして簡単に騙されてしまうのでしょうか?
ここまで読んだあなたは、「高齢者が引っかかるんだろう。オレには関係のない話」と思ったかもしれませんが、じつはそういう人が最も詐欺被害に遭いやすいのです。
最近「ビデオに映っているのはあなたですか?」というFacebookのメッセージがよく届きます。これは、ウイルスが仕込まれたスパムメッセージで、これをクリックするとパスワードを盗まれてしまい、Facebookアカウントが乗っ取られます。そして、自分のFacebookの友達に同様のスパムメッセージが送信され、自分が「加害者」になるのです。高齢という理由でFacebookアカウントを乗っ取られた人は多くないでしょう。
私のFacebookタイムラインを見ると、 “「ビデオに映っているのはあなたですか?」はスパム・メッセージなので、絶対にクリックしないでください” と警告を促す投稿が、ほぼ毎日見られます。詐欺に引っかかる人は、こうした情報が流れているにもかかわらず、スルーしてしまうのかもしれません。
ほかにも、大手ECサイトやクレジットカード会社を装ったフィッシング詐欺のメールが毎日届きますが、これらの被害者の年齢は、10代がピークといいます。
そこで今回は、詐欺に引っかかってしまう心理的理由と、引っかからないための対策についてお伝えします。
(1)認知的不協和
こうした詐欺においては、「自分は絶対に騙されない」と思っている人ほど騙される傾向があります。
心理学者フェスティンガーが唱えた理論に「認知的不協和」があります。自分の中で、2つの矛盾する心理を抱えていると、強い不快感が生じます。その場合、不快感を解消するために、2つの心理のうちのどちらかの認知を変えるか、歪めるかしてしまうことがあります。これが認知的不協和です。
たとえば、「自分は絶対に詐欺には引っかからない」と強く思っている人が怪しげな電話を受けたとしましょう。このとき「自分は賢いから詐欺には引っかからない」と「ひょっとしたら自分は詐欺に引っかかっている?」という2つの矛盾した気持ちが芽生えます。
後者の場合、「自分は詐欺に騙されそうになっている愚かな人間」であることを認めることになるので、「自分は絶対に詐欺に引っかからない」と思っている人は「自分は賢い」という認知のほうを優先させます。その結果、「詐欺かもしれない」という認知を「これは詐欺ではない!」という認知へと歪めてしまい、結果的に引っかかってしまうことになります。つまり、心の底では少し怪しいと思いながらも、相手のペースに乗せられてしまうのです。
(2)確証バイアス
最近「認知バイアス」に関する本が、書店で平積みされているのをよく見かけます。認知バイアスとは、直感やこれまでの経験にもとづく先入観によって、物事の判断が歪められたり、偏ったり、非合理的になったりする心理現象のことをいいます。
「確証バイアス」とは、この認知バイアスの中のひとつで、自分にとって都合のいい情報ばかりを無意識的に集めてしまい、反証する情報を無視し、スルーしてしまう傾向のことをいいます。
たとえば、「コロナワクチンを接種したうちの○人に重大な副反応が出た」「×人が死亡した」というニュースや情報に目がいきがちな人は、ネットなどで調べれば調べるほど、「ワクチンは危険」という結論を強化してしまいます。このように、最初から結論ありきで情報を集めると、「自分の知らない情報」や「結論とは反対の情報」が目に留まることはありません。あるいは、目に留まっても脳がスルーしていくのです。
「自分は絶対に詐欺に引っかからない」と思っている人は、そうした先入観で情報を見ていますから、「フィッシング詐欺の最新手口」というネット記事もスルーしてしまう。もし読んだとしても、まったく記憶に残らないのです。