「祖父の運転が心配で……。本当はそろそろ免許を返納してほしい」という「ミスFLASH2022」大塚杏奈さん。そんな彼女が「サポートカー限定免許」が運用開始されたことを知り「どんな免許で、どんな利点があるんですか?」と興味津々。その疑問に、モータージャーナリストの萩原文博氏が答える。
「年齢制限はありませんが、対象者は基本的に高齢者。これまでは “普通免許を更新するか、あるいは返納するか” と選択肢は2つでした。しかし返納率が伸びず、ペダル踏み間違いの重大事故も多発。それならば、『サポカー限定免許に切り替え、安全性の高いサポカーだけに乗る』という選択肢を用意したのです」
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その利点は、もちろん安全性が向上し、高齢者ドライバーの事故が減ること。一方で、懸念材料も多い。「サポカー自体、まだ数は少なく、国内メーカー8社の全126車種(4月21日時点)。2020年度以降に製造された車に限られるのが現実」(萩原氏)という。
さらにトヨタやダイハツなどで、メーカー純正品として自動ブレーキの「後付け装置」を販売しているが、これらを装備した車も対象外だ。そうなると、限定免許を取得した大半の人は、サポカーへの「買い替え」が必須となる。
「対象のサポカーを買う必要があるなら、わざわざ限定免許に替えたくないということになるんです。また、衝突軽減ブレーキ(自動ブレーキ)搭載車の保険料9%割引がさらに拡大するといった情報も現状ありません」(萩原氏)
おまけに強制力もないし、自己申告であるため、サポカー限定免許の普及はなかなか進みそうにない。
■あくまでもサポート機能過信がいちばん怖い
したがって関心は「より安全性の高いサポカー選び」に集中する。
「少ないといっても100台以上あるなかから選ぶなんて、大変」と言う杏奈さんのために用意したのは、軽自動車人気No.1のホンダN−BOX。ボディや広々とした室内、使い勝手のよさだけでなく、4段階あるサポカーのレベルの最上位「サポカーSワイド」にランクされる車だ。
サポカーは、搭載される運転支援機能によって、次の4つのタイプに分けられる。
(1)自動ブレーキ機能のみを装備した「サポカー」。
(2)そのひとつ上が「サポカーSベーシック」。こちらは対車両の低速自動ブレーキ(時速30km以下で作動)と、ペダル踏み間違い時加速抑制装置が備わる。
(3)さらにその上の「サポカーSベーシック+」。作動速度が「ベーシック」より高い対車両の自動ブレーキと、ペダル踏み間違い時の加速抑制装置が加わる。
(4)最上位の「サポカーSワイド」。車両だけでなく、歩行者にも対応した自動ブレーキ、そしてペダル踏み間違い時加速抑制装置、車線逸脱警報、先進ライトを装備。ちなみに、サポカー限定免許で運転できるのは「(2)以上」の車だ。
さて杏奈さんはN−BOXを初めて運転し、「サポカーSワイド」の実力を体験した。道路を横断する歩行者と衝突の恐れがあると、音とディスプレー表示で警告。さらにステアリング操作支援により、回避を促される場面に遭遇した。
続いてシステムが車線(実線、破線)を検知すると、ディスプレー表示とステアリング振動の警告がなされ、車線内へ戻るようにステアリング支援機能が働いた。
「 “うっかり” を確実に警告してくれるなんて、本当にすごい」と感心しきり。
そしてもっとも重要なペダル踏み間違い時加速抑制装置を駐車場で体験するとーー。
ブレーキを踏んだつもりでアクセルを強く踏み込んでも、前方に飛び出さないよう誤発進抑制機能が作動した。停車時や時速約10km以下の低速走行時に前方の障害物を検知し、ドライバーがアクセルを踏み込んだ場合の急発進を防ぐシステムである。さらに、N−BOXには前進だけでなく、後方誤発進抑制機能も装備されている。
残念ながら先行車や対向車などを検知して、ハイビームをローに切り替える自動切替型前照灯先進ライトは体験できなかったが、「これだけサポートされれば、事故もずいぶんと少なくなりますよね。祖父にはこんな車に乗ってほしい」と杏奈さん。
ただし車まかせは禁物。注意点を萩原氏が強調する。
「支援機能にも限界があります。もっとも危険なのは機械を過信して油断すること。あくまで操作するのは人間。つねに周囲の状況に注意してください」
写真・萩原文博
取材&文・佐藤篤司
モデル・大塚杏奈(ミスFLASH2022)