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樺沢紫苑の『読む!エナジードリンク』 中高年のメンタル危機を予防する3つの方法
ライフ・マネーFLASH編集部
記事投稿日:2022.05.30 06:00 最終更新日:2022.05.30 06:00
俳優の渡辺裕之さん(享年66)、タレントの上島竜兵さん(享年61)が相次いで逝去されました。報道に衝撃を受けた人も多いでしょう。
厚生労働省は5月11日、「著名人の自殺に関する報道にあたってのお願い」という文書を「メディア関係者」向けに出しました。 “著名人の自殺及びその手段や場所等の詳細に触れる報道は、報じ方によっては「子どもや若者、自殺念慮を抱えている人の自殺を誘発する可能性」があります。『自殺報道ガイドライン』を踏まえた報道をお願いいたします” という内容です。
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ある人物の自殺が他の複数の自殺を引き起こす現象は「群発自殺」と呼ばれます。とくに著名人の自殺がマスメディアを通じて大々的に報道されたような場合には、群発自殺が拡大する危険が高まります。なかでも、若者、精神疾患にかかっている人、これまでに自殺行為に及んだことがある人、自殺者と同じような問題を抱えている人などが影響を受ける危険が高いといえます。こうした人たちが、報道の影響を受けないことを祈るばかりです。
■ストレスは時間差で表れる
精神疾患を引き起こす「メンタルの不調」ということで言うと、今の時期は要注意です。
第57回の当連載「『五月病』に打ち勝つ方法」では、ゴールデンウイーク明けあたりからメンタル不調を訴える人が急増する、と書きました。また別のウェブ記事では、「5月、6月が危ない……」と “メンタルダウン警報” を発しました。
なぜ、「5月、6月が危ない」のかというと、東京や大阪など18都道府県に出されていた「まん延防止等重点措置」がすべて解除されたのが、3月21日だからです。
今年の2月、3月あたりは、日本全国で新型コロナの新規感染者数が連日10万人ほどで、人々のストレスがピークに達していたと推測されます。こうした大きなストレスを被った場合、すぐにメンタルに不調をきたしそうなものですが、実際に表れるまでには「時差」があります。心と体は、しばらくは持ちこたえてくれるのです。その期間は、だいたい3カ月です。
たとえば、仕事で猛烈に忙しかったとしても、すぐにメンタルダウンするわけではありません。忙しさが落ち着いた3~6カ月後くらいに、うつ病を発症するのはよくあることです。
最近は、外出の制限もなくなり、会食や旅行なども普通におこなえるようになって、ストレスは軽減しているようにみえます。しかし、そうした時期にこそ、時間差でメンタル不調は訪れます。油断は禁物なのです。
■中高年男性にメンタルの危機が起きやすい理由
自殺が最も多い年代をご存じでしょうか? それは、50~59歳です。そして、この年代を中心に、40歳以上の自殺が、じつに全体の4分の3近くを占めます。ちなみに、2014年までは、60~69歳が第1位でした。50~69歳の割合は全体の約3割を占めます(令和3年)。また、男性と女性の自殺者数の比率はほぼ2対1で、男性の自殺者数は女性の2倍近くにものぼります。
自殺というと、「若者の自殺」が注目されがちですが、こと数に限って言えば、圧倒的に中高年男性が多い。視点を変えれば、この層が最もメンタルの危機に直面している、ということもできます。
なぜ中高年男性にメンタルの危機が起きやすいのでしょうか?
男性の場合、「仕事での成功」を人生の目標に据えている人が多くいます。しかし、50代も半ばを過ぎると、会社での先行きが見えてきて、「これ以上の昇進は難しい」という “諦めムード” が漂います。なかでも、仕事で頑張っていた人ほど、そういう状況になると、「目標喪失」の状態に陥ります。さらに、会社以外の場で人間関係を築いてこなかった人は、退職後に「孤独」の問題に直面します。外出が減ることからくる「運動不足」の問題も、そこに加わります。
■メンタルの危機を予防する3つの方法
中高年男性の読者のなかには、「最近どうも気分がふさぎがちだ」「有名人の自殺のニュースを見ると、他人事とは思えない」と感じる人がいるかもしれません。
そういう人のために、ここからはメンタルの危機を予防する3つの方法について、お伝えします。