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ヤクルト髙津臣吾監督が明かす「投手ローテーション」の秘密…新時代の潮流か?

ライフ・マネー 投稿日:2022.06.24 16:00FLASH編集部

ヤクルト髙津臣吾監督が明かす「投手ローテーション」の秘密…新時代の潮流か?

交流戦の優勝インタビューを受ける髙津監督(写真・時事通信)

 

■規定投球回数に達した投手がゼロでも勝てた理由

 

 2021年の投手陣は、先発、ブルペンともに戦力的に大幅にアップした(ただし、理想形、完成形とは程遠いとは書いておく)。

 

 まず、先発陣のことを見ていくと、2021年で注目を集めたのは、日本一のチームでありながら規定投球回数(143回)に達した投手がおらず、さらにはチーム内の最多勝が小川泰弘と奥川恭伸の9勝ずつだったことだ。

 

 ふたりに続くのはサイスニードの6勝、そして「4勝グループ」が金久保優斗、石川雅規、高橋奎二、高梨裕稔の4人で、原樹理が3勝だった。

 

 

 小川と奥川を除く6人については、シーズンを通して活躍は出来なかったけれど、序盤戦の苦しい時期をもちこたえてくれたり、シーズン途中からローテーションに加わり、ゲームをしっかりと作ってくれたことが大きかった。その結果として、10勝に到達した先発投手がいなかったということだ。

 

 投球回数でもっとも投げたのは小川で、128回1/3。小川はコロナウイルス感染で離脱した時期があったので、シーズンを通して投げていれば143回は行っていたと思う。

 

 また、開幕時は先発ローテーションに入っていた田口麗斗とスアレスのふたりが途中からブルペンに回ったことで、投球回数が伸びなかったことも影響している。

 

 左投手が不足しているのは、スワローズのウィークポイントとして明白だが、トレードで田口を獲得し、彼がジャイアンツ時代にブルペンの経験があったことも考慮し、途中からリリーバーとして活躍してくれたのは大きかった。投手陣に幅をもたせることが出来たのだ。

 

 結果的に先発で2番目に多く投げたのは奥川で、105回。奥川は中10日を基本にしていたが、このプランのなかでしっかりと仕事をしてくれた。

 

■ローテーションの基本的な考え方

 

 なかには「6人にとどまらず、7人以上の先発投手陣を用意するスワローズのローテーションの考え方が、新時代の潮流になるのでは?」と評価してくださる方もいる。先発の駒を増やして戦っていくという新しい戦い方があるのでは? という考え方だ。

 

 たしかに2021年の先発起用法は目新しく見えたかもしれない。このローテーションは、高卒2年目の奥川にシーズンを通して活躍してもらうためにはどうしたらいいか、ということをきっかけに考えられたプランだ。

 

 もうひとり、高橋も通常の中6日以上の間隔を空けた方が、いいパフォーマンスを発揮出来るという判断をしたことで、中7日以上の先発投手が2枚になったのだ。

 

 シーズン後半のローテーションを考えるときは、カレンダーとにらめっこした。タイガース戦とジャイアンツ戦はいつか。ふたりが投げる日を設定しながら、ベテランの石川、小川については中6日でローテーションを守ってもらった。

 

 ある意味、パッチワークのようなローテーションであり、中6日と中10日の投手を組み合わせるのは、なかなか骨が折れる作業だ。ベテラン勢の理解も必要である。その意味で、石川や小川はチームの方針をよく飲み込んでくれたと思う。感謝だ。

 

 スワローズとしては今後、奥川や高橋級の高卒投手が入団してきた場合、同じようなストーリーで育成していくことになると思う。中10日で投げる投手が今後も出てくる可能性は高い。

 

 ただし、僕個人の考え方として、本当に強いチームを作りたいならば、基本的には信頼出来る6人の先発投手で1年間回していった方が良い。

 

 奥川、高橋がフィジカル的にも成長していけば、数年後には、そうした理想のローテーションを作ることが可能になるはずだ。

 

 なぜ、そういう考えをもっているかというと、メジャーリーグに前例があるからだ。

 

 僕がホワイトソックスに入団したのは2004年のことだったが、メジャーリーグへの移籍を考えるようになってから、よく午前中のテレビ中継を見ていた。2003年に驚いたのは、レギュラーシーズン162試合を5人の先発投手で完走した球団があったことだ。

 

 イチローがプレーしていたシアトル・マリナーズである。

 

 この年、マリナーズはフロントエースのフレディ・ガルシア、軟投派のベテラン、ジェイミー・モイヤー、そしてジョエル・ピネイロ、ギル・メッシュ、ライアン・フランクリンの5人が一度もローテーションを休むことなく投げ続け、ポストシーズンに進出は出来なかったものの、93勝をあげた。先発5人、20勝のモイヤーを筆頭に全員が2ケタ勝利をマークしていた。

 

 これは、すごいことだ。監督の立場からすれば、こういうローテーションを作れたらチームは絶対に安定するだろうなと思う。

 

 

 以上、髙津臣吾氏の新刊『一軍監督の仕事 育った彼らを勝たせたい』(光文社新書)をもとに再構成しました。常勝チームになるための「スワローズ・ウェイ」とは?

 

●『一軍監督の仕事』詳細はこちら

 

( SmartFLASH )

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