●多くの人を傷つける“愉快犯”だった
アベノミクスを「アホノミクス」と切って捨て、現在は岸田文雄首相の経済政策を「アホダノミクス」と命名し、普及に勤しんでいる同志社大学大学院の浜矩子教授(69)。
暗号資産も目の敵にしているのかと思いきや、草創期のビットコインについて、こう理解を示した。
「いいほうに解釈してあげればですが、(ビットコインの創始者)サトシ・ナカモト氏は、“義憤”に駆られてビットコインを作り出したと思います。
ビットコインが誕生したのは2009年。前年にリーマンショックが起こり、無辜の人々が苦しんでいる状況への反撃として始まりました。
法定通貨の“虚構”を暴露したうえで、巧みなアルゴリズムで革命を起こしてやる、という感覚だったのだと思います」
だが、ビットコインは既存の通貨に取って代わることはなかった。
「結局、ビットコインはある種の“愉快犯”だったのです。体制を揶揄し、ひっくり返すことだけが目的で、代替通貨を確立するという問題意識はありませんでした。
そして今、“無辜の人々の苦しみ”への怒りを源泉としていたはずのビットコインは、価値の乱高下によって、多くの人を傷つけています。この低金利のなか、収益を上げられない人たちをおびき寄せる投機的な資産になってしまいました。今後も、ビットコインは乱高下を続けるでしょう。
人々や経済活動を攪乱し、傷つけるものは存在を許されないと思いますね」(浜氏)
元日本銀行参事で、暗号資産の研究でも知られる早稲田大学の岩村充名誉教授(72)は、こう煙に巻いた。
「私は0.0001BTCも持ってないから、今回の暴落は火星で起きているような話ですが、そもそも暴落の原因を議論しても無意味ですよ」
岩村氏が続ける。
「無意味というのは、ビットコインはたとえ暴落していようと、常にそのときの値段が経済的に合理的になるメカニズムだからです。『マイニング(採掘)』と呼ばれるビットコインの取引情報の解析作業をすると、報酬としてビットコインが付与されます。1BTCが1万ドルなら1万ドルぶんの、1ドルなら1ドルぶんの電力代で採掘できるような仕組みなんです」
ビットコインが将来どうなるのかはわからない。それでも言えることはあるという。
「金の埋蔵量が限られているように、ビットコインも発行上限が決まっています。私は、上限のある資産の価値は、将来の世界が豊かであるほど高くなると考えています。
現在のように、世界が不安定なときは、将来的にも当分は上がらないでしょうね」
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ビットコインへの距離感はそれぞれだが、現時点では「将来性ゼロ」で奇跡の一致。
億万長者への道は険しそうだ。