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廃線の危機 今のうちに乗っておくべき「東北ローカル線」の絶景
ライフ・マネーFLASH編集部
記事投稿日:2022.08.27 06:00 最終更新日:2022.08.27 06:00
「今回赤字が公表された東北地方の路線は、どれもいつ廃線になってもおかしくない路線ばかりです。鉄道ファンに限らず、機会があるうちに乗っておくべきです」
そう語るのは、鉄道専門の写真家集団・レイルマンフォトオフィスに所属する山下大祐氏。JR東日本は今夏、一日の平均利用者数(輸送密度)が2000人未満の35路線66区間の収支を初めて公表。すべての路線が2019年度は営業赤字で、年間赤字額は693億円にも達する。一例として、羽越本線の村上駅~鶴岡駅間では、年間の運輸収入6億円を稼ぐための営業費用は55億円。こういった失われる可能性のある地方路線は東北地方に集中している。
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「東北エリアの赤字額の大きな線区は、海岸線や山間部など地理的にも難所と呼べる場所が多いようです。100円の運賃を稼ぐために営業経費が1万円以上かかる路線まであるといわれていて、廃線検討やむなしの状況です」
こうした廃線目前の路線を「応援しつつ楽しむ方法もある」と山下氏は語る。
「東北地方にある中小私鉄や第三セクター鉄道などマイナーな列車への乗車を目指した鉄道旅はおすすめです。各路線ともJRの路線に接続しているので、おのずとJR線の利用にも繋がります」
赤字路線とはいえ、風景は魅力的。鉄道写真の専門家がおすすめする東北地方ならではの旅の魅力とは?
「東北は季節の表情がはっきりしています。夏は暑く、冬は氷点下まで気温が下がり、地域によっては雪国になる。日本は世界的に四季の彩りが豊かといわれますが、東北はそのなかでも随一。四季折々の自然環境が、東北の風情や文化を形成していて、それをそのまま体感できるのが、東北地方の路線の魅力です」
■多くの温泉街と田園を100年以上繋いだ
◎陸羽東線/小牛田~新庄
1913年に開業。「○○温泉」という駅が5つあるほど沿線には温泉街が点在し、松尾芭蕉ゆかりの地も多く「奥の細道ゆけむりライン」と呼ばれる。「奥州三名湯」に数えられる鳴子温泉はこけしで有名。鳴子峡の景勝地は特に人気で、紅葉の時期は多くの観光客が訪れる。駅前に分水嶺を見ることができる堺田駅もある。仙台方面から鳴子温泉駅までは田園地帯で集落も多いが、そこから西の山間エリアでは、乗客数が極端に減少している
■寒空と日本海を望む木造駅舎
◎五能線/東能代~川部
五能線の驫木(とどろき)駅。風光明媚な五能線のなかでも、とくにその佇まいが旅情を誘う。遮るものがなく海を見渡せるプラットホームに、待合室とトイレだけの木造駅舎が立っている
■『銀河鉄道の夜』のモチーフとなった夜空
◎釜石線/花巻~釜石
宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』のモチーフとなったのが釜石線の前身である岩手軽便鉄道。連続したアーチが美しい宮守川橋梁(めがね橋)は、夜にはライトアップされ、まさに銀河鉄道のようになる。2014年から蒸気機関車C58形が牽引する「SL銀河」が運行されるなど、話題も少なくなかったが、その運行は残念ながら2023年春までになると発表されている
■下北半島の春は黄色い絨毯を
◎大湊線/野辺地~大湊
青森県の下北半島を走り「はまなすベイライン大湊線」という愛称で親しまれる路線。全線が非電化の単線というミニマムさが郷愁を誘う。上北郡横浜町近辺の菜の花畑が有名で、3月に一面の黄色い絨毯が車窓からもたっぷりと楽しめる。また列車は陸奥湾沿いを疾走し、多くの区間で車窓から海が望める。晴天の日には、イタコで有名な恐山の山容も見ることができる
■渓谷の山肌が紅葉で燃え盛る
◎水郡線/水戸~安積永盛・上菅谷~常陸太田
水郡線沿線には茨城県内の「袋田の滝」や「月待の滝」などの名瀑が多い。福島県内では「戸津辺の桜」や「花園の桜」など桜の名木が多く、観光資源に溢れている。そのなかでも、福島県山間部の矢祭山公園は紅葉の名所として知られる。美しい渓谷沿いの山肌が真っ赤に燃え盛る様子は一見の価値あり。例年10月下旬ごろがいちばんの紅葉の見ごろ。奥久慈しゃもを使った地鶏料理が沿線の各駅周辺で味わえるのも、食通には嬉しい
写真・レイルマンフォトオフィス