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検査費用は数千円「尿1滴で早期ガンを発見」実用化へ
ライフ・マネーFLASH編集部
記事投稿日:2017.05.26 11:00 最終更新日:2017.05.26 11:00
土の中や海の中に生息する線虫。植物や動物に寄生することから、害虫として扱われることも多いが、日本をはじめとする世界各国の研究で、豊かな嗅覚を持つユニークな生き物として注目を集めることが増えてきた。
こうした線虫の豊かな嗅覚を人間の医療分野に役立てようという試みがある。日立製作所とHIROTSUバイオサイエンスが共同研究を行っているのは、線虫を使ったガン検査方法の確立だ。
FLASHでは1年以上前にこの新技術を取材済みだが、その後、どうなったのか再取材した。
「もともと線虫に注目したきっかけは、海外などでは知られるようになってきた『ガン探知犬』の存在でした。線虫は嗅覚が犬と同等かそれ以上に優れていることから、ガン探知犬と同じようにガンの匂いを識別し、さらに飼育コストが低く、安価な検査ができる可能性があるのではと考えました」
こう話すのは、HIROTSUバイオサイエンスの代表取締役、廣津崇亮氏だ。廣津氏が開発中の線虫を使ったガン検査法「N-NOSE」は、たった尿1滴でさまざまなガン種に反応する。
特に消化器領域に強みを持つ医療機関と組んだ臨床研究では、60を超えるガン検体に対して、90%を超える感度でガンを検出する好成績をおさめた。これは他の腫瘍マーカーの感度をしのぐものとして、早期の実用化が期待されている。
「早期発見が難しいことで知られるすい臓ガンでも、90%を超える感度で検出できました。すい臓ガンや大腸ガン、胃ガン、食道ガン、胆のうガン、胆管ガンといった消化器ガンだけではなく、前立腺ガン、乳ガンおよび肺ガンを検出する結果が得られており、それ以外のガン種についても臨床研究を進めていることころです」(廣津氏)
尿を一滴取るだけで検査できるので、患者の負担はとても軽い。さらに費用が数千円と安価なことも魅力的だ。
廣津氏は「N-NOSE」の2019年末の実用化を目指している。さらに日立製作所が持つ品質管理方法や情報処理技術と組み合わせて、N-NOSE自動解析システムの共同開発が進められている。
こうした科学技術の進歩が、病院嫌い、検査嫌いを克服するのかもしれない。