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40歳の男女650人を集めた「W成人式」の成功が転機になった

ライフ・マネー 投稿日:2017.05.30 11:00FLASH編集部

40歳の男女650人を集めた「W成人式」の成功が転機になった

『写真:AFLO』

 

 波瀾万丈の前半生だったが、常に目標があった。高校を中退しながらも、35歳でIT企業を立ち上げた。そして、次の目標は
!?

 社名の「ICC」とは「アイディアル・クリエイティブ・コンサルティング」の略である。企業のホームページの制作がおもな仕事だ。若くして起業する人の多くがそうであるように、河野厚さん(42)も起伏に富んだ人生を歩んできた。

 

 中学時代は、桐蔭学園のラグビー部で、最高の栄誉である東日本大会の優勝を目指して練習に励んだ。ところが3年生の秋季大会が終わると、学校の友達と遊ぶより、渋谷で親しくなった仲間と遊ぶほうがおもしろくなった。

 

 そして高校1年生のとき、同じ学校の生徒とのトラブルが原因で退学し、渋谷の街が学校代わりとなった。

 

「スポーツが好きで、常に目標を設定して、上を目指していた。16歳からはボクシングに励んだ。渋谷に行き始めても、へんなところが真面目で、いちばん強くなりたいとか、有名になりたいとか思いながら、真面目に不良っぽいことをしていた」

 

 と河野さんは言う。

 

 チーマーと呼ばれた少年たちが渋谷で騒いでいたころの話だ。渋谷でも目立った存在になっていた河野さんは、19歳のときに親兄弟のことや、将来子供が生まれたときのことを考え、真っ当に生きようと思い、居酒屋で働き始めた。チーマーの世界はイヤではなかったが、その世界の派閥的な人間関係には魅力を感じなかった。

 

 22歳のとき、居酒屋の店長の仕事を辞め、父親に将来のことを相談した。父親は物流・倉庫会社のオーナーで、祖父は政治家だった。

 

「将来社長になりたいが、何からやればいいのか。学校も行ってないので、なんの知識もなかった。親父からは『どんなことでも人と人の話で決まることだから、まず人間関係をしっかり身につけられる営業をしたらいい』といわれた」(河野さん)

 

 父親の話を聞いて「フロムエー」を買い、営業職を派遣している会社に応募。面接には父親のスーツを借りて行った。採用されて派遣されたのが「リクルート」の通信事業部。事業部が解散するまで2年間在籍した。その後は父親の知人が経営する広島の倉庫会社に1年、自ら応募した東京のITのシステム会社に2年。 

 

 27歳のとき、「物流をやりたい」と再度父親に相談し、父親の会社の専務と会った。開口一番「和を乱すから迷惑だ」。実績を挙げ、役員として戻って来るようにと断わられた。社長の息子にストレートに意見を述べてくれる専務を信頼し、這い上がり方を尋ねた。

 

「その年から上を目指すなら、IT系のベンチャー企業の営業で力を発揮するしかない」と言われた。早速また「フロムエー」を買い、アドバイスどおりIT企業の営業にアルバイトで入った。

 

「そこで結果を出して1年で課長に昇進。会社も途中で上場して、2年で上場企業の部長になって、部下も50人ぐらいに増えた。朝9時から夜中の2時ぐらいまで、ほぼ毎日みっちり仕事をしていた。自分でもいちばん頑張った時期だと思う」(河野さん)

 

 3年後、独立する直属の上司に誘われて一緒にIT企業を立ち上げ、役員として入った。6年在籍し、35歳のとき、今度は一人で現在の会社を作った。ところで、会社も軌道に乗った40歳のとき、河野さんにひとつの転機が訪れる。東京で毎年おこなわれている「W成人式」の幹事に任命されたのである。

 

 ダブル成人式とは40歳を祝う会で、東京では5年ほど前から始まり、毎年その年齢になる人のなかから、幹事が数人選ばれる。自分自身の節目と思った河野さんは幹事を引き受け、仲間に呼びかけたところ、ほかにも30人が幹事に手を挙げた。

 

 ほとんどが一家言持つ社長だった。これまでにない大きな会にしようと7カ月間にわたり30人をまとめて企画を考え、自分たちの「W成人式」を創り上げた。

 

 イベントは昨年2月、麻布の東京アメリカンクラブで開催され、40歳の男女650人が集まった。男性1万2000円、女性1万円のチケット予約を打ち切るほど盛況だった。これが本業にもプラスの効果を生み、受注にもいい影響が出ている。

 

「個性の強い幹事たちと揉めることもなく、みんなから『やってよかった』と言われるぐらいうまくできた。幹事の仲間から、こんな素晴らしい経験を味わえたことに感謝の言葉をもらい、本当に嬉しかった。それで、もう少し大きな仕事もできるのではないかと、ちょっと自信がついた」(河野さん)

 

 手広く仕事をしている幹事たちの影響も強い。河野さんは今、自社をもっと発展させたいと思う一方で、広く世の役に立つ仕事をしたいと考えている。

 

「物流は生活を底辺で支えている。勉強して、いずれ携わりたい。そう考えるのは親父のことや、祖父に対する思いのようなものがあるからかも……」

 

 自信を持つと同時に、「世のために」という政治家の血が、騒ぎ始めているようだ。

(週刊FLASH 2017年6月6日号)

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