ライフ・マネーライフ・マネー

中高生の10人に1人が「学校に行きたいのに行けない」うち4割は成人後も悩まされる「起立性調節障害」とは

ライフ・マネー 投稿日:2023.09.24 16:00FLASH編集部

中高生の10人に1人が「学校に行きたいのに行けない」うち4割は成人後も悩まされる「起立性調節障害」とは

 

 不登校の原因は実に様々ですが、中でも多いものを挙げると次のようなケースがあります。

 

・友達とのトラブル
・先生が怖くて行けなくなった
・大勢生徒がいる教室に入るのが苦痛
・席に座っているのが苦手で教室をうろうろしたり、校庭に出てしまったりすることで、学校へ行きにくくなった
・授業中におなかが痛くなって頻繁にトイレに行くため、学校へ行きにくくなった
・学校の勉強がつまらなくて自分の好きな勉強がしたいため、学校へ行きたくない
・月曜日になると頭痛や腹痛がして家から出られない

 

 

 中にはそれでも学校へ行こうと、起床して朝食も食べ、きちんと支度も済んだのに、結局家から出られない、校門まではやってきたけれど中に入れない、といったこともあります。

 

 そして、このような不登校の児童生徒の中で、特に、朝の調子が悪くて学校に行けないケースが、起立性調節障害です。

 

 布団から出ようとしても、どうしてもだるくて起き上がれない、強い頭痛で動けない、吐き気がするなど、これまた症状は人によって様々ですが、特に朝の調子が悪いために、起立性調節障害がある子どもは「学校へ行きたくても行けない」ことが多くなります。

 

 こうした起立性調節障害の子どもの多くは、調子が悪くなる前は、ごく普通に生活できていたケースがほとんどです。幼稚園や小学校低学年までは全く問題なく学校に通っていたのに、小学校高学年から中学生頃から急に調子を崩すのです。

 

 当たり前のように登校できていたのに、原因も分からないまま急に絶不調になってしまうため、本人も家族も大きく動揺してしまいます。特に、本人にとってみれば、自分自身が別人になってしまったような感覚だろうと思います。

 

■「怠け病」「仮病」と放置されているケースが多いのも大問題

 

 起立性調節障害は、学校の授業が難しくなり、対人関係が複雑になり、様々なことに興味を示す年齢になった二次性徴期頃に症状が出てきます。

 

 熱が出るわけでもなく、強い咳があるわけでもありません。本人だけにしか、このつらさは分からないのです。そのため、他人の目には「本当に病気なのだろうか?」と疑わしく映ってしまうことが少なくありません。

 

 起立性調節障害の多くが「怠け病」「仮病」と誤解を受けてしまいがちなのは、こうした事情があるためです。起立性調節障害という病名自体が、まだまだよく知られていないという現状もあります。担任の先生ですらよく知らないということが少なくないでしょう。

 

 熱や咳といった、他人から見てすぐそれと分かるような症状がないだけに、起立性調節障害のつらさはなかなか理解してもらえません。周りに理解してもらえないから、なおのこと本人は孤独感を募らせ、つらさが増していきます。

 

 身体的な不調から始まり、周囲の理解不足が重なって居心地が悪くなった結果、精神的にも参ってしまい教室から足が遠のいてしまう――いわば、「つらさの悪循環」です。

 

■中高生の10人に1人――うち4割は成人後も症状に悩まされる

 

 2016年に日本小児科学会がまとめた資料によれば、軽症例も含めると、中高生の約10%に起立性調節障害が見られているとされています。全国の中高生の各学年に約12万人、中高生全体では約70万人いると推定されています。

 

 軽症例では日常生活にあまり支障はないものの、「欠席を繰り返して不登校状態に陥る重症例は約1%」といわれています。実際に、起立性調節障害による不登校は、全国で約7万人と推定されています。

 

 1999年の調査では、10代前半の子どもの約8%と見られていた起立性調節障害は、年々増加しており、現在では10%程度といわれています。

 

 増加の原因ははっきり分かっておらず、さらに困ったことに、小児期に発症した起立性調節障害の約40%は、成人以降にも症状が続くという報告もあります。

 

 岡山県教育委員会の『起立性調節障害対応ガイドライン』によると、小学生で約5%、中学生で約10%、重症例は小中学生全体の約1%。女子は男子より2割ほど多く、小学校高学年から増え始め、中学生で急増する傾向があります。初潮や身長の伸びのスパートなど二次性徴の頃に発症することが多いようです。

 

 近年、起立性調節障害と診断される子どもは増えており、現代の夜型社会、運動不足、複雑化した社会における心理社会的ストレスが背景にあるとしています。

 

 とはいえ、起立性調節障害がある子どもはほぼ間違いなく、栄養障害に陥っています。中でも、特に不足しているのがタンパク質、ビタミンB、鉄や亜鉛です。

 

 必要な栄養と摂取量は、国が基準を示してくれています。それを確認しながら、自分や家族が食べているものが、必要な栄養をきちんと含んでいるのかを、いま一度、再確認してみてください。

 

 外食や加工済み食品が中心になっていて、栄養価が低くなってしまったものを食べてはいないでしょうか?

 

 ファストフード、ファミリーレストラン、お弁当、スーパーには調理済みの惣菜、コンビニには有名シェフとコラボした冷凍食品がズラリと並んでいます。どれもおいしく、便利なのですが、残念ながら、栄養面では疑問だらけです。知らず知らずのうちに様々な添加物も一緒に摂取してしまっていることは間違いありません。

 

 便利さと引き換えに、犠牲にしているものが多々あることをぜひ知っていただきたいのです。「すべてを手作りしろ」と言いたいわけではありません。「自分が食べているものが、自分の身体をちゃんと動かすことができる栄養を含んでいるのか?」という視点を持ってもらいたい。

 

 そして、起立性調節障害がある子どもたちではどうだろうかと、考えてもらいたいのです。

 

 

 以上、今西康次氏の新刊『朝、起きられない病~起立性調節障害と栄養の関係』(光文社新書)を元に再構成しました。「だるい」「頭が痛い」「吐き気がする」…多くの子どもが悩む思春期の不調の原因とは。

 

●『朝、起きられない病』詳細はこちら

( SmartFLASH )

続きを見る

ライフ・マネー一覧をもっと見る

ライフ・マネー 一覧を見る

今、あなたにおすすめの記事