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「酒の飲みすぎだろ」部下を思い込みで叱ったらNG!なんでもハラスメント時代の “パワハラ境界線” どこなのか

ライフ・マネー 投稿日:2024.04.19 06:00FLASH編集部

「酒の飲みすぎだろ」部下を思い込みで叱ったらNG!なんでもハラスメント時代の “パワハラ境界線” どこなのか

 

 パワハラセクハラ、マタハラに、最近ではメッセージの文末の「。」(マル)を威圧的だとする「マルハラ」なる言葉も誕生した。急増するハラスメントだが、専門家らに話を聞くと、こう口をそろえる。

 

「ハラスメントは、怖がらなくていい!」

 

 先月、岐阜県岐南町の小島英雄前町長が、女性職員に対する、99回にわたる「セクハラ」で辞任したことが記憶に新しい。しかし、ハラスメント対策専門家の山藤(ざんとう)祐子氏は、こう考察する。

 

 

「小島町長は、99回もの問題行動があったので、それを総合すれば、今回の辞任は当然のことです。しかし、行動のひとつひとつを見ると、『誰にでも、どんな状況でも即アウト』なものは少ないように思います。

 

『頭ポンポン』しただけ、『ちゃん』づけをしただけ、『名前呼び』しただけで、ただちにハラスメントに認定されることはありません。

 

 今、『○○ハラ』という言葉が増えています。メディアがさまざまなハラスメントを “命名” しているわけですが、これはミスリードだと思います。ハラスメントに名前をつけて分類するほうが、ハラスメントかもしれませんよ(笑)」

 

■人格否定かどうかがパワハラの分かれ目に

 

 社労士の内海正人氏も「ハラスメントで気をつけなくてはいけないことは、ごく限られている」と語る。

 

「当然、『バカ』『アホ』『無能』などはアウトです。しかし、こうした人格否定をしなければ、指導の一環で多少強い口調の発言があっても、裁判ではハラスメント認定されません。

 

 裁判で決定的に不利になるのは、そうした発言が録音されていた場合です。上司側が『冗談だった』と主張しても、録音されると、認定されるリスクが高まります」

 

 しかし、こうしたアウトな発言があったとしても、“即アウト” とは限らない。内海氏が続ける。

 

「ハラスメント認定には継続性も重要です。一度暴言を吐いても、すぐに謝ったうえで “再発” しなければ、訴えられる可能性はかなり低い。

 

 50代がほかに気をつけることとすれば、『偏見を持って叱らない』ということです。遅刻した行為への注意はOKですが、『夜中に遊んでいるんだろ』とか『酒の飲みすぎだろ』など、思い込みでの意見をしはじめると、ハラスメントになりえます」

 

 部下の叱り方として、前出の山藤氏は、叱る “シチュエーション” に言及する。

 

「トラブルを避けるために、1対1ではなく、絶対に第三者を入れましょう。密室での会話や叱責は、威圧的に感じられてしまうことが多いです。

 

 逆に褒めるときは、容姿は当然NGです。仕事への姿勢などでもいいのですが、具体的な行動に関する称賛がベターです。若手にとっては『何がいいことだったのか』理解できますから、ハラスメントだと捉えられにくいのです」

 

 上司と部下とがもっとも密に関係するのが、指示出しのタイミングだ。特に、若者への指示の仕方には要注意だと、山藤氏が続ける。

 

「仕事を依頼する際には、『その仕事をしなければならない理由』や、『なぜあなたに頼んでいるのか』を、ちゃんと説明しておくことが重要です。できれば、メールなどで指示をして、文面に残しておくことがベストです。

 

 というのも、今の若者には、上司から仕事の指示を受けること自体をパワハラだと勘違いしているケースが多いんです。仕事の正当性を示し、指示する様子を記録に残せば、業務上必要があって指示したと客観的に証明できます」

 

 多く聞かれるようになった「○○ハラ」の一つに、「逆ハラスメント(逆ハラ)」と呼ばれるものがある。本来、上司から部下への威圧的な行為が「パワハラ」だ。逆に部下から上司へのハラスメントのことを「逆ハラ」と呼ぶ。

 

「正当な仕事の指示にもかかわらず、部下が上司に『ハラスメントだ』と指摘して口を封じる行為も、一種のハラスメントです。40~50代の管理職たちが、Z世代から『それパワハラですよね』と言われてしまうと、なんの指導もできなくなるという事例が増えています。

 

 また、古参のパートが新任の課長をいびるなどといったケースも。それらも、『その職場で優位な者からの行為』ということで、ハラスメントに認定されるんです。件数はまだ多くありませんが、年齢は関係なくなりつつあります」(内海氏)

( 週刊FLASH 2024年4月30日号 )

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