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再雇用後に「仕事のやる気が起きない」男たち…自己効力感を高めるにはどうすればいいのか
ライフ・マネーFLASH編集部
記事投稿日:2024.07.26 11:00 最終更新日:2024.07.26 11:39
事業主に義務づけられている65歳までの高年齢者雇用確保措置の中で最も多いのが継続雇用制度で、その大半を再雇用が占める。
再雇用は、働き慣れた定年前と同じ会社に勤務できる一方で、雇用確保措置が義務化されている65歳を超えて就業できる企業はまだ少なく、66歳以降も働き続けたければ転職するか、フリーランスとして仕事を請け負うかなど、いずれにしても自分で仕事を探さなければならない。
すでに2021年4月から70歳までの高年齢者の就業確保措置が事業主の努力義務となっているが、70歳までの就業確保措置を実施済み企業は29.7%にとどまっている。
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ちなみに、65歳までの「雇用確保」(義務づけ)とは異なり、70歳までは「就業確保」(努力義務)と表現され、事業主が直接雇用しない形態も含まれている。日本企業で70歳までの雇用が浸透するにはまだ時間がかかるだろう。
■非正規雇用多く、処遇悪化
労働政策研究・研修機構の60~69歳を対象にした「60代の雇用・生活調査」(男女5000人対象)によると、2019年の調査時点で仕事をしていた人は59.0%。性別では男性が69.1%と、女性(49.3%)より約20ポイント高くなっている。
調査時点で働いていた60~64歳男性のうち、「会社、団体などに雇われて」が最も多く、70.7%を占めた。次いで、「会社、団体などの役員」(12.8%)、「商店、工場、農家などの自家営業や自由業」(11.1%)の順だった。
定年退職後も会社などに雇用されて、働く男性が多いことがわかる。雇用されて働く60~64歳男性の雇用形態は、非正規雇用労働者が58.1%で、正社員(37.1%)の1.6倍に上った。
再雇用の多くは1年ごとに契約を更新する嘱託、契約社員などの非正規雇用だが、定年前とほとんど変わらない仕事を担当しているケースも増えており、それにもかかわらず給与が大きく減少することへの不満を募らせるシニア社員も少なくない。
多くの企業でシニア雇用が広がる一方で、再雇用者の基本給は定年直前よりも下がるのが一般的だが、雇用主側には現役の正社員との「同一労働同一賃金」の原則(パートタイム・有期雇用労働法)に抵触しないよう慎重な対応も求められており、「不合理な待遇格差」を巡り、裁判も起きている。
■プライドを捨てられるかどうか
定年後の再雇用による変化は、処遇の悪化だけではない。同じ会社で働き続けるということは、かつての部下が上司になることでもあり、同期入社の社員が役員などとして会社に残っている場合は社内での地位に大きな差が生じることにもなる。
そうした激変する職場環境を受け入れられるかどうか。それはすなわち、プライドを捨てられるかどうかにもかかっている。部長など上位の管理職に就いていた人ほど、定年後の再雇用で壁にぶち当たるケースが少なくなく、処遇の悪化などに対して不満を募らせ、働くモチベーションが低下する傾向が強いことが、筆者のインタビューからも明らかになっている。
具体的には、「管理職になれるまで育ててやった元部下に、顎で使われるのが我慢ならない」「定年まで必死に積み上げてきた実績を否定されたようで仕事への熱意が湧かない」といった声がよく聞かれた。
再雇用での処遇の悪化に不満を募らせる根底には、男は「出世して高収入を得て、社会的評価を得なければならない」といった旧来の「男らしさ」のジェンダー規範に縛られている場合が少なくなく、「男らしさ」を具現化できないがゆえに、働く意欲と職務遂行能力の低下につながってしまうのである。
■「男らしさ」から抜け出す好機
一方、処遇の悪化はやむを得ないとある程度は許容できても、「仕事にやりがいがない」「自らの働きが会社に認められていない」などと感じ、働く意欲が下がる場合も少なくない。
その要因として挙げられるのが、定年後のシニア社員に対する人事制度である。定年に達すると、機械的に以前適用されていた職務や役割、能力によってランク分けする等級制度からは対象外となり、人事評価も行われないケースが多い。
多くが定年直前とほぼ同じ職務に就いているにもかかわらず、期待される役割や責任が明確に示されず、報酬も激減する。どのように貢献すればよいのかわからないまま、期待役割を担い、会社の役に立っているという実感を抱きにくくさせていると考えられる。
こうした課題の解決には、ひとつは中高年男性の固定的なジェンダー意識の改革が有効である。出世や報酬、評価などへの執着は、「男らしさ」規範に縛られている面が強い。そのため、定年後を「男らしさ」規範の呪縛から抜け出す好機と捉えてみてはどうだろうか。
これと同時に、自身が仕事、働くことに抱く意味、価値観を、現役時代の社内ポジションや報酬といった外発的に動機づけられた労働から、やりがいや達成感など内部から沸き起こる内発的に動機づけられた労働へと転換できれば、自己効力感を高めることにもなるだろう。
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以上、奥田祥子氏の近刊『等身大の定年後 お金・働き方・生きがい』(光文社新書)をもとに再構成しました。60歳を過ぎても働き続けることが可能になるなか、〈等身大〉の定年後について考えます。
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