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ステルス型、燃え尽き型…「気がつくと動画を何時間も見てしまう」アナタは要注意!「50代のメンタル崩壊」タイプ別克服術
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ダラダラと無感動に過ごすのは危険な兆候(イラスト・津島隆太)
企業戦士として約30年を過ごし、「これくらいの仕事量は普通だ」「弱みは見せられない」と、残業の日々を送っている写写丸世代も多いだろう。だが、そんな信念があなたを「メンタル崩壊」に追い込んでしまうかもしれない――。
明治大学法学部の人気教授(法言語学)で、自己啓発本など60冊以上の著書がある堀田秀吾氏(56)も、典型的な仕事人間だった。だが、50代になってから自身に異変を感じるようになったという。
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「仕事は山積みなのに、気がつくと動画サイトを何時間も見続けてしまうんです。いま思うと、『メンタル崩壊』の兆候でした」
ストレスコントロールを研究対象のひとつとする堀田教授でも、知らず知らずのうちに追い込まれていたのだ。
「それほど50歳前後のメンタルヘルス問題は身近にあり、深刻化しやすいのだと再認識しました」(堀田教授)
最初は何気ない変化であるため、異変はわかりづらい。
「突然やる気がなくなったり、些細なことにキレてしまったり、衝動的にジャンクフードを食べ続けてしまったり……。感情がコントロールできなくなるのが典型的な『メンタル崩壊』の初期症状で、私もそれに該当していました。これに気づかないと、統合失調症やパニック障害などの深刻な状態に発展する可能性がありました」(堀田教授)
精神科専門医の髙木希奈医師は、多くの患者を診察してきた見地から、50代男性に多い「メンタル崩壊」は、男性ホルモンの減少による「更年期」のほか「大きく3つのタイプに分類できる」と言う。
(1)ステルス型
「自分でも気づかないうちにメンタルが低下し、心の内で負担を抱えてしまっているケースです。表情が硬くなって笑顔がなくなり、趣味や娯楽への興味がなくなるといった変化が起きます」
(2)社会的孤立型
「人間関係が希薄化し、孤独感に陥る状態です。社会的な繋がりが減ることで、メンタルが不安定化します。仕事に打ち込んで人づき合いもなく、気がつけば一人という状況に陥ることがあります」
(3)燃え尽き型
「それまでモチベーションを高く保っていた人が、突然やる気を失ってしまう症状です。努力に見合った結果が出なかった場合や、逆に大きな目標を達成したことで打ち込めるものがなくなったときに起こりがちです。責任感が強く、真面目な人が陥りやすいです」
次に紹介するのは、これら3つの「メンタル崩壊」に陥っている可能性がわかるチェックリストだ。
□メンタル崩壊チェックリスト
7~10個該当:その型の傾向が強く、早急な対処が必要
4~6個該当:その型に近い傾向があり、適切なケアを開始するのが望ましい
0~3個該当:現時点では深刻な状態ではないが、早めの対策で元気を保とう
(1)気づかず不調に…… “ステルス型” の特徴
□最近、笑うことが減った
□仕事を抱えすぎて休みがない
□イライラしやすくなった
□休んでも「まだ足りない」と感じる
□「自分は大丈夫」と無理を続けている
□自分がストレスを感じている自覚がない
□自分の感情を表現する機会が減ったと感じる
□人間関係や社会的なイベントへの関心が薄れている
□まだまだ仕事ができるはずだが行き詰まっている
□楽しかった趣味を面倒に感じるようになった
(2)人間関係が希薄化して陥る “社会的孤立型” の特徴
□人と会話をする機会が減った
□孤独を感じることが増えた
□SNSやメールでのやり取りが減った
□家族や友人と過ごす時間が減った
□人間関係や社会的なイベントへの関心が薄れている
□自分の状態について誰にも相談していない
□自分の感情を表現する機会が減ったと感じる
□外出するのが面倒に感じることが増えた
□アルコールやジャンクフードがやめられない
□「自分は一人でも大丈夫」と思い込んでいる
(3)仕事のしすぎが原因に “燃え尽き型” の特徴
□仕事への意欲が低下していると感じる
□極度の疲労感が続いている
□新しい目標が見つからない
□ケアレスミスや判断ミスが増えてきた
□朝起きるのが苦痛になっている
□過去の成功体験が忘れられない
□「これ以上は無理だ」と思うことが増えている
□休日に何もしたくない気分が続いている
□仕事を休むことに罪悪感がある
□自分の状態について誰にも相談していない
前出の堀田教授は、「ステルス型」に近そうだ。当時を振り返って語る。
「『まだできる』という過信があって、知らず知らずのうちに追い込まれていました。異変に気がつくころには、笑顔が消えていたようです。まわりから『いつもの先生じゃない』と心配され、ハッとしたこともあります」
漫画『セックス依存症になりました。』(集英社)がヒットしている漫画家の津島隆太氏(47)は最近、「布団に入って寝ようというときに、なぜか焦燥感に襲われる」と言う。
「仕事は順調なのですが、漫画の執筆に集中するあまり、ほかのことに興味が持てないんです。好きな映画を観ても以前ほど感動しなくなり、だらだらとお菓子を食べて過ごしてしまうことがあります」
職業柄、人との接点も少ない津島氏は、「社会的孤立型」といえる。
「昔はアシスタントさんと一緒に作業していましたが、最近はオンラインでのやり取りが当たり前になり、顔さえ見たことがない人もいるんです。漫画を通して『セックス依存症』の実態を世の中に伝えたいのに果たせていないと感じることがあり、落ち込むことも多いです」
俳優で、シニアタレント事務所「ジュンウエノエンタテイメント」を経営する上野淳氏(68)は、「燃え尽き型」に当たるようだ。
「8年前に突然、激しい発汗とめまいに襲われたんです。当時は俳優業のかたわら、新たに芸能事務所の経営という重圧も背負うことになり、所属タレントのギャラ交渉など、慣れない仕事に日々、追われていました」
脳神経内科などを受診しても異常は見つからなかったが、最後に訪れた精神科医から、意外な診断を受けた。
「『しいて言えば抑うつ状態です。病気ではありません』という言葉を聞いた瞬間、不思議と心が軽くなって『やるしかない』と思えました。少しずつ、所属するシニアタレントがCMなどに起用されるようになり、彼らの生き生きとした笑顔を見ているうちに、僕のメンタルも、いつの間にか回復していました」
上野氏のように “小さな成功体験” を積み重ねることが、「燃え尽き型」を克服するためには重要だ。髙木医師が語る。
「『ステルス型』は自分を見つめ直す機会を持つこと、『社会的孤立型』は、やはり人との繋がりを取り戻すのがいちばんです。共通して言えることは、不調を一人で抱え込まず、カウンセリングや医療機関を活用すること。そして、適度な運動や趣味を通して、心の視野を広げることです」
「メンタル崩壊」を食い止めて、50代を満喫しよう。
取材/文・吉澤恵理(医療ジャーナリスト)