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財政難なのに「1億円トイレ」批判殺到も…じつは宣伝効果抜群「年間来場者100万人」の経済効果が【豪華な内装写真あり】

奈良県御杖村のトイレ
「暗い・狭い・怖い」といわれた公衆トイレが様変わりをしている。なかでも注目されているのが “1億円トイレ” だ。いまや観光スポットにもなり、地域起こしにひと役買っているという。だが今、昨年2月に奈良県御杖(みつえ)村で竣工した “1億円トイレ” に「建設費用が高すぎる」と非難の声が上がっている。
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「事業費は用地取得費、設計費、工事費などで合計約9400万円です。近年の人件費、資材の高騰の影響もありこの費用になりましたが、工事費の積算単価は国、県の基準に基づいて設計していますし、村の観光、PRの狙いもあり妥当であると考えています」(御杖村担当者)
トイレ近くを流れる青蓮寺川はホタルの観賞スポットで知られ、6〜7月には多くの観光客が訪れるという。だが、本誌が取材した2月は、そこまで混雑していなかった。トイレを利用した夫婦は、「今回のニュースで初めて存在を知りました。途中のトイレは我慢して来ました」と笑う。
一方、観光スポットとして定着したトイレもある。福岡県・大任(おうとう)町にある「道の駅おおとう桜街道」内の1億円トイレは、入口のクリスタルピアノが評判だ。
「ピアノはどなたでも弾くことができます。トイレができる前は、大任町がどこにあるのか県内でもご存じの方は少なかったのですが、完成後は『あの、1億円トイレの町か』と言われるようになりました。道の駅の年間来場者数は100万人を超えています」(大任町担当者)
兵庫県・伊丹市の「昆陽池(こやいけ)公園」にも昨年 “1億円トイレ” が完成した。
「『使ってみたい、入ってみたい』と思っていただける優しい印象のトイレを目指し、市の職員でデザインを考え、約9800万円の建設費で完成しました。まだ、正確なデータはありませんが、トイレットペーパーの消費数から、以前に比べて4、5倍ほど利用者が増えていると思われます」(伊丹市担当者)
香川県・小豆島の景勝地・寒霞渓(かんかけい)の1億円トイレは1990年に完成した。
「珍しい円形の建物で直径14m高さ3m、広さは156平方メートルあります。冷暖房を完備し、27のトイレに多機能トイレ、ベビーシート、公衆電話などを備え、出入り口が自動ドアだったので、当時は『最新鋭の公衆トイレ』として話題になりました」と担当者。
全国の高額トイレの多くは、「過疎対策事業債」で造られている。これは国が費用の7割を交付、自治体が3割を負担するという国の財政措置である。費用対効果ははたして……。