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大地震にもろい町「中野区」「杉並区」「品川区」も!
ライフ・マネーFLASH編集部
記事投稿日:2018.04.12 06:00 最終更新日:2018.04.12 08:21
これから30年以内に、M7クラスの首都直下型地震が起きる可能性はじつに70%。そんななか、人気の住宅街に“異変”が! 現地を歩いて見えてきたこととは――。
東京都が2月15日に発表した「地震に関する地域危険度測定調査」は、大地震発生時に想定される建物倒壊や火災、避難・救助の困難度などを、都内の地域ごとに評価してランクづけしたもの。
「総合危険度」が2013年の前回調査から大幅に上昇した地域として、杉並や中野など、23区西部の地域が目立っていることが話題となっている。
調査では都内5177地域を危険度で順位づけしており、「総合危険度」がもっとも高い「ランク5」は上位85地域。多くは荒川や足立など区東部だが、中野が4地域、杉並、品川が3地域含まれている。
今回の総合危険度上位100のうち、前回から100以上順位が上昇(悪化)した地域を抜き出したのが上の表だ。中野5地域、杉並3地域。品川も3地域含まれている。
地盤が緩く、木造住宅が密集(木密)する荒川、墨田川沿いの地域の危険度が高いことはもはや常識だが、今回急上昇した地域は木密地域ではあっても、地盤の硬い武蔵野台地上にあり、これほど危険度が高いとは考えられていなかった。
地盤と密接に関係する「建物倒壊危険度」は、これらの地域はランクが2か3で比較的低い。そのぶん、「火災危険度」「災害時活動困難度」のランクが高くなっている。
5年でこれほど大きく順位が変動したのはなぜか。都は「評価方法が変わったことの影響が大きい」と説明する。
「火災危険度のシミュレーションでは延焼時間を6時間から12時間にし、危険性をより反映できるようになりました。木密地域は危険性が高くなる傾向があります。
災害時活動困難度には、幅12メートル以上の外郭道路とつながる幅6メートル以上の道路に到達するまでの所要時間を評価に取り入れました。救助活動の実態に、より則した評価になっていると考えています」(都市整備局防災都市づくり課・栗原聰夫課長)
「災害時活動困難度」ランク上位は多摩地区や杉並、世田谷といった西部がほとんどで、東部はランクが低い。
「多摩はそもそも道路基盤が少ない地域。区部は東部のほうが道路状況はいい。中野や杉並など、今回順位が上がったのは狭小な道路が多い地域です。街の新陳代謝といいますか、建て替え率も東部のほうが高い傾向です」(同)
本誌記者はこれらの街をくまなく歩きまわったが、やはり「細い道が多く」「木造住宅が密集」していることは共通していた。「昭和の木造アパート」も多く、一戸ごとの建坪も小さい。
「もともと危険度の高い地域が、基準変更であぶり出されたということ」と語るのは災害危機コンサルタントの堀越謙一氏だ。
「東部は地盤が悪いこともあり、都も積極的に街の整備を進めていますが、西部はほとんど進まない。土地の権利関係が複雑なところが多く、2メートルしかない道路に面している家など、売買されにくいし建て替えも不可能。
これからもこの地域は、おそらく変わりようがない。ある意味 “取り残された地域” といえるでしょう」
とはいえ、東京都全体で見れば、危険度は下がっている。耐震性の高い建物への建て替えなどで、「建物倒壊危険量」は平均で約2割低下。「火災危険量」は建て替えや道路整備に加え、石油ストーブなど危険度が高い器具の使用減少もあり、約4割減少だ。
だが、なにより大事なのは、防災の意識をつねに持つことだ。
「残念ながら多くの人は、自分の住む街がランク上位に入っていないことで安心してしまうのです」
危機管理教育研究所の国崎信江氏はこのようなハザードマップをもっと積極的に活用すべきだと力説する。
「自分の住む地域だけでなく、周囲にもどんな危険があるか、避難場所までどうやって行くのか、調べておくべき。まずは関心を持つこと。地域全体で意識が高まれば、危険度が高い地域でも防災力を高めることは可能です」
今後30年以内にM7クラスの首都直下型地震が起きる可能性は70%。備えるしかない。
(週刊FLASH 2018年3月20日号)