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大谷翔平にHIKAKIN、令和の教科書に載っている有名人40「過去の偉人は、いまの子どもの心に響かない」【ヤンキー先生が解説】

ライフ・マネー 記事投稿日:2026.05.02 06:00 最終更新日:2026.05.02 06:00

大谷翔平にHIKAKIN、令和の教科書に載っている有名人40「過去の偉人は、いまの子どもの心に響かない」【ヤンキー先生が解説】

販売中の小学校、中学校、高校の教科書(写真・金谷千治)

 

 4月から、おもに高校1年生が使用する教科書が全面改訂された。教科書は原則として4年ごとに改訂されるが、令和に入り内容は大きく様変わり。登場する“偉人”たちも変化している。

 

 そんな令和の“偉人”の筆頭が、メジャーリーガーの大谷翔平だ。小中学校の保健体育や道徳に多く登場し、『中学生の道徳3』(あかつき教育図書)では、「夢へのステップ」として4ページにわたり掲載され、大谷が活用していた目標設定シートを紹介している。さらに、小学校の算数の教科書『新編 新しい算数5上』(東京書籍)には「私と算数」と題し、小学生時代から算数が好きで、野球選手になったいまも、データの分析で使っているなど、例を出して説明している。日本が誇るスーパースターだけあって、登場する教科書の数はダントツだ。

 

 意外なところでは、HIKAKIN(37)。中学校の教科書『新編新しい道徳3』(東京書籍)では、どうしてYouTuberになったのか、いかに自分をアップデートしていくかについて、本人が寄稿している。

 

 しかし昔と比べ、なぜ教科書に登場する“偉人”が大きく変わったのか。

 

「HIKAKINやROLANDのような有名人が起用されるようになった大きなきっかけは、小学校で2018年度、中学校で2019年度から、道徳が正式な教科になったことです」と、老舗教科書出版社の編集部員は説明する。これにより、出版社は子どもの興味を引き、かつ教員からも評価される新しいスタイルの「道徳」の教科書を作る必要に迫られたという。

 

「道徳は、人間の精神性や活動そのものを扱うため、マザー・テレサや野口英世らを取り上げるのが一般的でした。でも、いまは過去の偉人では子どもたちの心に響きません。そこで、現役で活躍している有名人に焦点を当てるようになったのです」(同前)

 

 こんな令和の教科書を“先生”はどう思っているのか?

 

「中学の国語の教科書を読みましたが、大の大人から見てもなかなかおもしろいものを作っているな、と思いますよ」

 

 そんな感想を話すのは、2025年3月31日で政界を引退し、現在は社会構想大学院大学の実務教育研究科教授などを務める“ヤンキー先生”こと義家弘介氏だ。義家氏は国会議員になる前に、神奈川県横浜市教育委員会の委員として、実際に教科書の採択をおこなってきた。

 

「文部科学省でおこなう教科書検定に合格した、莫大な数の教科書のなかから、教育委員会の委員たちの合議によって、市の学校で採用される教科書が決まります。

 

 私が横浜市の教育委員を務めていたときは、自分たちの所管する子どもたちが学ぶ教科書の中身を見たことがない人たちばかりでした。私学でしたら学校が決めますが、公立は教育委員会が決めるので『読まなくてもいいのか』と疑問が湧いたんです。それで、専門家にそれぞれの教科書の特徴などをレクチャーしていただいて、一科目ずつ教育委員会のみなさんで読み込んでから採択しました」(義家氏、以下「 」内同)

 

 さらに義家氏は「教科書は“子どもたちの人生の地図」だと続ける。

 

「教科書は、子どもがどこに行くのか、何をするのかが定まっていく、地図帳のようなものです。テストで何点取ったか、ということだけに興味を持つのではなく、親御さんにはパラパラでいいので、自分の子どもがどんな勉強をしているのか、使っている教科書を見ていただきたいですね」

 

 この視点で見ると、「大谷翔平が教科書に登場する理由がわかる」という。

 

「小中学生には、まず教科書に興味を持ってもらうことが重要です。シンボリックな人物を登場させると、取っつきやすくなるので……いまもっともシンボリックな人物といえば、大谷選手でしょう。しばらく日本にいなかった、誰もが好きな最強のヒーローですからね。

 

 あとは、英語の教科書に登場している羽生結弦さん。英語が嫌いでも、羽生さんの人生ストーリーが描かれているなら読んでみようと、子どもたちの目が輝くと思います」

 

 さらに、いま何かと話題として取り上げられる「多様性」についても、「“令和の偉人”たちを上手に使うことが重要になってくる」と話す。

 

「多様性といってもよくわからないので、入り口をわかりやすくすることが必要なのです。

 

 たとえば、渡辺直美さんはお笑い芸人として活躍しながら、SNSでたくさん発信してアメリカでも注目されている。『彼女は素晴らしい』という切り口で多様性を説明すれば、子どもたちも興味を持ち、理解できると思います。また、世界のトップ選手だったバドミントンの桃田(賢斗)さんが、違法賭博という自分の過ちをきちんと認めたうえで、『どん底まで落ちた自分を支えてくれた、まわりの人がいたから復活できた』と語れば、失敗してもやり直せるという、子どもたちにとって “いちばんいい教材” になりますよね」

 

 だが、こうしたシンボリックな人物を教科書に載せることには功罪もあるという。

 

 2025年、銀行詐欺などの罪で実刑判決を受けた大谷の元通訳・水原一平受刑者について、こんな苦い思い出を語る。

 

「中学3年生用の英語の教科書で、教科書検定に合格して採択が終わった後に、事件が発覚したんです。

 

 詳しい差し替え作業について存じ上げませんが、私も肝を冷やしました。英雄が一夜にしてたたかれる社会ですから、教科書で扱う場合は相当なリスクがありますよね」

 

 一方、高校の音楽の教科書にはOfficial髭男dismや星野源、斉藤和義の曲が紹介されているが、こちらも一部で物議を醸している。

 

「学校音楽は教育の音楽ですから、音符や歌い方を覚えたりと基礎的なことを教えます。そこでヒゲダンなどのポップスは、はたして“学校で教えるべき音楽”なのかという議論です。でも子どもには『音楽は嫌だ』ではなく、『音楽は楽しい』から入ってもらわないと、ディープな学びにはつながらないですからね。私なら、すでに多くの音楽の教科書に載っていますが、中島みゆきさんがいいと思います。すごい詩を書かれる方ですから、国語の言葉としても、音楽の表現力としても素晴らしい」

 

 教科書は昨今、デジタル化に向かって移行期に入っている。義家氏は、教科書には大切にしてほしいことがあるという。

 

「英語教材の場合、デジタル教科書ならクリックすれば発音まで聞ける時代ですからね。とはいえ、国語はやはり紙の本を持って、姿勢正しく読んで学ぶということもあると思うんです。紙は人間の英知ですから、大事にしたい文化でもありますよね」

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出典元: 週刊FLASH 2026年5月12日・19日合併号

著者: 『FLASH』編集部

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