
無造作に積まれたCDの山と暮らすデラさん(写真・木村哲夫)
フィギュアやCD、鉄道模型など、大切にしていたコレクションを、遺族に二束三文で売り飛ばされないためにやっておくべきこととは――。コレクターが直面する“終活”のリアル。
会社員・DJであるデラさん(44)のコレクションは、中古ショップなどで100円ポッキリで売られているCDだ。その行方を、どのように見据えているのか!?
閑静な住宅地に佇むアパートの一室。玄関を開けると、まず目に飛び込んでくるのは、床から腰の高さまで積み上げられたCDの塔だ。ケース同士がぎりぎりのバランスで重なり合い、細い通路を残して、左右から迫ってくる。
「狭くてすみません」
上下グレーのパーカー姿で申し訳なさそうに迎えてくれたのは、主のデラさん。足の踏み場を探しながら奥へ進むと、ダイニングキッチンも2階の2部屋も、壁際にCDが層をなし、テーブルや椅子もCD置き場と化している。無造作に積まれたディスクの山。これらはすべて、100円で購入されたものだ。
「中学生のときから、安いCDを中古で買ったりはしてたんですよ。もともとヒップホップやハウスが好きで、でも高くてなかなか買えませんでしたから」
100円CDを買い漁るようになったのは、20年ほど前から。デラさんは平日はサラリーマンとして働き、週末にはクラブでDJとしてプレイしている。CDは彼にとって、 “仕事道具” でもあるのだ。では、なぜ「100円CD」なのか。
「 “ダサい” “わけがわかんない” と言われるような音楽で、プレイ次第でフロアを盛り上げられたらおもしろいと思っていて。むしろ、誰も見向きもしない音楽で客を踊らせたほうが、価値があると感じるんです」
中古CDショップに100円で並ぶのは、まったく売れなかったか、バカ売れして市場にあふれた作品。デラさんのコレクションも、globeや宇多田ヒカル、西村知美やCHAGEが率いたMULTI MAXなどジャンルは一切問わず、映画やアニメのサウンドトラックも混在している。
「正直、どんなCDを買ったのか把握しきれていないですし、置き場も決めていないので、同じタイトルが何十枚もあると思います。いざDJで使おうとしても、この量では探し出すのが難しい。だからこそ、どこにあっても見つかるように、同じものでも買うんです。全部でどれくらいか? うーん、2万〜3万枚くらいだと思いますが、正確なところは自分でもわからないです」
CDを眺めているだけで、ある種の “満腹感” を覚える。この環境では、ゆっくり横になることすら難しそうだ。
「じつは、隣の部屋も借りていて、間取りは同じなんですが、そこには100円の本やレコードが山積みで、本当に足の踏み場がありません。玄関には壊れた自転車が置いてあるので、そもそも入ることもできないんです」
家賃を倍額支払ってでも、この生活を維持しているのだ。
「今でも週に50枚ほどは買っています。買ったまま聴いていないものも、3分の1くらいはあるかもしれません。何を買ったのか、完全に忘れているものも多いですしね。なかには、今では数万円の値がつく “激レア” なものもあるらしいんですが、まったく気にしていません。欲しいものがあれば、どんどん持っていってもらってもいいですよ」
もっとも、100円CDを中古店に持ち込んでも「買取り不可」とされるケースが多く、実質的に資産価値はほぼゼロに等しい。では、終活についてはどう考えているのか。
「ぜんぶ捨ててもらってもかまいません。妻にもそう伝えていますし、こだわりはまったくないですね」
聞けば、海外を放浪するタイプの奥様らしく、現在は、宮古島で暮らしているという。自由な2人だからこそ、この生活が成り立っている。
「デジタル遺品を考える会」代表で、“私物の行方”について調査を続ける古田雄介氏に、デラさんのコレクションについて、アドバイスしてもらった。
「購入して、ある程度活用できればそれで十分という考え方なんですね。てっきり一人暮らしかと思っていましたが、ご夫婦でこの環境というのは、ある意味 “奇跡の組み合わせ” で興味深いです。ただ、これだけの物量となると、いざ処分するとなれば相当な手間がかかるでしょうね。その一方で、後腐れがなく、後悔も生みにくい。そういう意味では、思い切って手放しやすいとも言えるのかもしれません」
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