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ゲーセン経営30年の名物オーナーが語る「10年赤字でもビデオゲーム一筋」貫く理由…“不良のたまり場” のイメージ打破して、eスポーツの先駆けに

ライフ・マネー 記事投稿日:2026.09.29 16:20 最終更新日:2026.09.29 16:20

ゲーセン経営30年の名物オーナーが語る「10年赤字でもビデオゲーム一筋」貫く理由…“不良のたまり場” のイメージ打破して、eスポーツの先駆けに

「ゲームニュートン」の名物オーナー・松田泰明さん

 

「ゲームセンターの衰退に関しては悲しく思っていますけど、そこで生まれた人たちが現在プロになってご飯を食べられてることに対しては、めちゃくちゃ嬉しく思っています」

 

 こう語るのは、東京・板橋区にあるゲームセンター「ゲームニュートン」のオーナー・松田泰明さん(52)だ。同エリアに「大山店」「志村店」の2店舗が展開されている。

 

 現在、愛知県名古屋市で開催されている「アジア競技大会」ではeスポーツ(エレクトロニックスポーツ)が正式なメダル競技として採用され、日本代表が活躍している。『ぷよぷよ』で11歳の栗原悠輝選手(プレイヤーネームは「ゆうき」)が金メダルを獲得し、「格闘ゲーム団体戦」では銀メダルに輝くなど、メダルラッシュが続く。

 

 このかつてない熱狂を、同大会の運営にも携わる松田さんは静かに、そして熱い思いで見守っていた。

 

「イベントを多く開催してることもあって、業界で僕のことを知っている方も多い。だから、eスポーツに関する取材を受けることも多いんですが、僕のなかではゲームの呼び方が変わっただけ。いまできている仕事も、人生の半分以上、ゲームセンターの経営と向き合ってきた延長線上にある、と思っています」

 

 eスポーツのなかでも人気ジャンルのひとつとされる格闘ゲーム。同ジャンルにおいて、現在世界の強豪と渡りあう日本のプロ選手たちの多くは、若かりしころ、ゲームセンターでその腕を磨いてきた。松田さんは、「ゲームニュートン」で、多くのプレイヤーが切磋琢磨する環境を30年以上守り続けてきた名物オーナーとして知られる。

 

 店舗には、『ストリートファイター』シリーズの過去作など、いわゆるレトロビデオゲームの筐体が並ぶ。20~30年前に生まれた過去作の “猛者” たちが集まるのも、この店の特徴だ。

 

「そこにあるのは(ストリートファイター)2、3、4ですが、いまeスポーツで採用されてる最新のナンバリングは6ですからね(笑)。この時代にブラウン管のゲームが大好きでやってる人も大勢いるんですよ」

 

 そんな松田さんも小学生のころからゲーム少年だった。

 

「当時は格闘ゲームが出ていなかったので、アクションゲームやシューティングゲームが好きでした。『ゲームセンターは不良のたまり場だから行っちゃだめだよ』とよく言われて。でも、行っちゃだめって言われると、行きたくなるじゃないですか。おつかいを頼まれると、少し安いお店を探して50円、100円とおつりをごまかして(笑)、ここでゲームをやっていました」

 

 松田さんが「ここ」と話すのは「ゲームニュートン大山店」。松田さんが小学生のころは「アタック」というゲームセンターだった。それから10数年が経ち、松田さんは「ゲームニュートン志村店」の店長を務めていた。

 

 イベントをおこなうと100人ほどのお客さんが集まり、店内に入り切らない。そこで、新店舗の物件を探していた松田さんの耳に入ってきたのが元アタック、現在のゲームニュートン大山店の物件だった。

 

「大家さんにアポイントを取って話すと、そのときに入っていた漫画喫茶が家賃を半年も延滞して出ていってくれないって嘆いていたんです。

 

 それで、僕が直接話を聞きに行ったら、『家賃の延滞金なども含めて200万円ほど必要なんだけど、その現金がないからやめたくてもやめられない』って。だから、『僕が200万円払ったら出ていってくれますか?』と直談判して。それで、その漫画喫茶にあった2万冊のマンガを200万円で買い取ったんです」

 

 マンガの買取金額の知識もなく買い取ったものの、漫画喫茶のチェーンをやっている友人に買取を打診すると、「だいたい1冊10円」。2万冊でも20万円にしかならないのかと愕然としたが、「新店舗を出すし、松田さんの頼みなら」と200万円で買い取ってくれた。それから、松田さんが数カ月かけて完成させたのがゲームニュートン大山店だ。

 

「志村店に関しては、会社が閉店を決めたタイミングで僕はまだ20代と若かったし、失敗しても300〜500万円ぐらいどうにかなるって考えていました。本当にヤバかったらトラックの運転手でもなんでもやろうと思っていたので、リスクとかは考えませんでした。人生って、そんなにいっぱいチャンスはないと思っていたんで」

 

 松田さんは「白髪だらけになるぐらい悩んだ」と当時を振り返る。そこで「会社をやめるので、ゲームニュートンを買い取らせてください」と直談判。

 

 すると、オーナーはその心意気に感動して、「退職金代わりに」と志村店を譲ってくれた。 当時は『ストリートファイターシリーズ』の大ヒットなどもあり、格闘ゲームは大人気。「ゲームニュートン」も多くのゲーマーたちで賑わった。そのころ、松田さんはあるプロジェクトを始動させていた。それが伝説の対戦型格闘ゲームの全国大会「闘劇」だ。

 

「自分がオーナーになったときは、ゲームセンターの “不良のたまり場” というイメージを変えたくて店内を明るくしました。それからはゲームの全国大会、いわゆる甲子園をやりたかったんですよ。

 

 それで、ゲーム雑誌『アルカディア』の編集長などにも相談して、全国のゲームセンターを巻き込んで派手にやりたいですね、という話になって、闘劇プロジェクトが始まりました。

 

 予選は『アルカディア』で募集すると、北は北海道、南は沖縄まで約500店舗ぐらいが賛同してくれ、日本中のゲームセンターで予選がおこなわれて。まさにゲームの全国大会でした」

 

 2003年にスタートした「闘劇」は2012年まで10回開催された。全国の予選会を勝ち抜いた猛者たちが一堂に集い、熱気に包まれた大人気大会となった。まさに現在のeスポーツの先駆けともいえる大会だった。

 

 それから月日が流れ、格闘ゲームだけではなく、多くのゲームが進化した。だが、家庭用やスマートフォンのゲームも進化したことで、ゲームセンターの客は減少してしまう。

 

 松田さんがゲームセンターのオーナーになった約30年前は全国で2万8000店あったが、現在は10分の1以下の約2000店に減ってしまったという。そんな現実を受け止めながらも、松田さんはこう話す。

 

「アーケードビデオゲームは衰退して、しかるべきルートをたどっています。いまはコンソール(家庭用ゲーム)やPC(STEAM)、携帯ゲームの時代なんですよ。

 

 でも、僕は小さいころからゲームセンターに育ててもらったので、誰よりも思い入れがあります。ゲームセンターの衰退は悲しいけど、いまのように大企業が協賛して、ゲーム番組が地上波で放送されるなんて、僕が20歳のころには考えられなかった。本当に夢物語みたいです。

 

 ゲームが市民権を得たと言ったら言いすぎかもしれないけど、『ゲームをやってます』と言って恥ずかしくない時代がきたことは嬉しく思っています。

 

 ウチはビデオゲームだけなので、正直、めちゃくちゃしんどい。10年ぐらいは赤字です。でも、これだけCGがすごい時代でも特撮にこだわっている人っているじゃないですか。ああいう感覚ですかね。もう愛と情熱だけです(笑)」

 

 そう話す松田さんが、20年以上、やり続けてきたことがある。それは毎週何曜日の何時から何時までと決めて、500円でいくらでもプレイできるフリープレイというシステムだ。

 

「初級者、中級者を育てたいんです。1回50円と言っても、強い人と勝負したらあっという間に数千円飲み込まれちゃう。でも、500円なら恐れず何度でも勝負を挑めるでしょ。

 

 逆もあって、あまりにも強すぎると干されちゃうんですよ。でも、フリープレイなら強すぎる人もチャレンジャーがひっきりなしに入ってくれば嬉しいですし。対戦格闘ゲームの大会文化を残すためにも、このシステムは続けていきたいですね」

 

 取材した9月27日は「ゲームニュートン大山店」の最終営業日。商店街の再開発にともない、松田さんの30年以上の思いが詰まった店は閉店する。

 

 コロナ禍で店の厳しい現状を生配信で訴えると、世界中のニュートンファンから、数カ月で約1000万円が集まった。いまでもゲームは1回50円。翻訳機を手に海外からも多くのファンが足を運ぶ。

 

 最終日の「ゲームニュートン大山店」は、閉店時間となる25時まで多くのお客さんで賑わい、すべてのビデオゲームは空くことがなかった。それだけ多くの人に愛されてきた。松田さんはそんなファンを愛おしそうに眺めながらこう話す。

 

「僕はビデオゲームに育ててもらったから、ゲームは好きなんですが、ゲームをやっているプレイヤーはもっと好きなんですよね。ゲームセンターに行くのはゲームをやりに行くだけじゃなくて、人に会いにいくみたいな。

 

 この場所は学生だろうがサラリーマンだろうが職人さんだろうが運転手さんだろうが、みんな職業も年齢もバラバラ。でもみんな同じゲームを通してつながっている。1回もしゃべったことがない人と、お金を入れただけで戦えるってすごくないですか?

 

 だから、この場所を大切にしたいんです。オンラインゲームの進歩は素晴らしいと思います。でも、ゲームで勝って抱き合ったり泣いたり笑ったりっていう生の人間ドラマには絶対に勝てないと思うんです。

 

 僕の夢は現状維持。ゲームセンターがなくならない、これ以上、減らない、現状を継続することが夢であり目標です。もう一つは僕が生きているうちに『闘劇』を復活させることですね」

 

 多くのファンに惜しまれながら「ゲームニュートン大山店」は21年の歴史に幕を閉じた。新店舗となる「ゲームニュートン板橋店」は、都営三田線・板橋区役所前駅の近辺で、12月下旬〜1月上旬にオープン予定。またここから松田さんの新しいスタートが始まる。

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出典元: SmartFLASH

著者: 『FLASH』編集部

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