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【目指せ不思議スポット】高千穂峰の山頂に突き刺さる天逆鉾
ライフ・マネーFLASH編集部
記事投稿日:2018.07.25 16:00 最終更新日:2018.07.25 16:00
全国各地に残された3つの “奇” を指して、「日本三奇」と呼ぶ。
東日本大震災の発生を予言したという、宮城県御釡神社の神竈。いつ誰が造ったのかわからない謎の巨大石造物、兵庫県生石神社の石の宝殿。そして高千穂峰の山頂に突き刺さる、宮崎霧島東神社の天逆鉾がそれだ。
これらはもともと、江戸時代の医者・橘南谿が自著の中で「3つの奇跡」と記したのが始まりとされ、いずれも謎として長い歴史を持っている。
なかでも天逆鉾は、300年以上前の文献にも取り上げられており、標高1574メートルの高みに誰が鉾を突き立てたのか、諸説ありながら今もわかっていない。
神話の中でイザナギとイザナミの夫婦神は、大地にこの天逆鉾を突き刺し、かき混ぜて日本列島を作ったと伝えられている。
では、なぜその鉾がこうして山頂に刺さっているのかといえば、それは世の中が平和を保ち、2度とこの鉾を使わなくてすむようにとの願いを込めて、鉾を逆さまにして高千穂峰の山頂に突き立てたからだと言われている。
ただし、度重なる火山の噴火で鉾は折れてしまい、今見られるものは数百年前に何者かがあつらえたレプリカなのだそう。地中に埋まっている折れた先の部分は、今も本物らしいが、なんにせよ、行けばそこに現物があるというのは何とも言えないロマンだ。
スタート地点である高千穂河原から1時間ほどすると、右手に御鉢の火口が見えてくる。そのヘリの部分にあたる山道、通称「馬の背」から見える景色は最高に雄大だ。周囲の山々はもちろん、遠く霞む町並み、そして見晴らしのいい日には鹿児島県の桜島や屋久島までが見渡せる。
これはまるで、はるか高みから鉾を使って陸地をこしらえた神の視点そのままだ。この眺望を体験すると、天孫降臨の神話はあながち作り話ではないように感じられてしまう。
霊峰の山頂には、チェーンで囲われたひときわ小高い地形の先に三叉のシルエットが見える。天逆鉾だ。レプリカとはいえ、これ自体も長い歴史を刻んだ史跡のようなもの。
山頂からの眺望もまたひとしおで、隣の新燃岳から吹き出す白煙もまた美しく見える。まさにこれまでの疲れが吹っ飛ぶ瞬間だった。
ちなみに、あの坂本龍馬が妻おりょうとの新婚旅行でこの高千穂峰を登ったのは、よく知られるエピソード。竜馬はその際、山頂の逆鉾を引き抜いてしまったことを姉に宛てた手紙の中で明かしているから、期待に違わぬ型破りな人物であったことが窺える。
龍馬夫妻はその後、麓の硫黄谷温泉で汗を流したそうだから、同じルートをたどって疲れを癒やすのもいいだろう。
思っていた以上にハードではあったが、遠からず必ずまた登りたい。そう思わせるだけの収穫のある登山であった。
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以上、友清哲氏の新刊『消えた日本史の謎』(知恵の森文庫)から再構成しました。謎の構造物、おかしな物体、奇妙な伝承、未解明のパワースポット…不思議をめぐる旅の記録です。