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牛乳パック羊羹が大ヒット「業務スーパー」驚きの逆張り戦略

ライフ・マネー 投稿日:2018.08.23 11:00FLASH編集部

牛乳パック羊羹が大ヒット「業務スーパー」驚きの逆張り戦略

 

 2000年3月の第1号店(兵庫県三木市)オープンから18年。ほかのスーパーとは一線を画した “激安良品” の独自路線で大躍進中の業務スーパー。その成長ぶりは、経済誌などでも取り上げられている。 

 

「店のルーツは、創業者が兵庫県加古川市で経営していた食品スーパーなんです」

 

 

 そう説明するのは、業務スーパーを展開する、神戸物産の西田聡取締役だ。 

 

「仕入れ競争で、圧倒的な量を扱う大手と価格勝負をしても、いずれ体力がなくなっていきます。小が大に勝つにはどうしたらよいのか。そこから生まれたのが『製販一体』の体制でした」

 

 1980年代後半、スーパー経営と並行して、創業者は中国に食品製造工場を設立し、商社として海外に卸していた。その食品を、自分たちで販売するスタイルに転換したのだ。 

 

「しかし、ただ安いものを作って売るだけでは、大手に勝てません。そこで取った戦略が、スーパーが普通はやらないことをやることでした」

 

 生鮮食品は扱わず、メインは冷凍食品。業者向けそのままの、大袋中心の品揃え、棚などに並べず、段ボール箱に入ったままの陳列ーーというスタイル。これらが、店側の負担を軽くした。

 

 業務用の大袋を使い、品目数を絞ることはそのままコストダウンに直結した。そしてなんといっても「業務用」を前面に打ち出したことが、ほかのスーパーとの決定的な違いだった。 

 

「今は、(業務スーパーの)どの店舗の看板にも『一般のお客様大歓迎』と書いてありますが、1号店には最初、それがなかったんです。『業務スーパー』とだけ。

 

 なので、ぜんぜんお客さんが来ませんでした(笑)。それはそうですよね。今みたいに知名度がなければ、業者専用の店だと思いますよね。そこで慌てて『一般の~』と入れたわけです」

 

 現在は、九州の一部を除き、北海道から沖縄まで、日本中で「業務スーパー」の緑の看板を見かけるようになった。

 

 だがじつは、全国にある805店舗(5月末時点)のうち、神戸物産の直営店は2店舗のみ。それ以外の店はすべて商標や商品を加盟店に提供するフランチャイズ(FC)だ。

 

「複数の店舗に行かれた方はわかると思いますが、店によって置いてある品揃えはけっこう違います。それはFCのオーナーさんにおまかせしている部分です。自ら青果を仕入れていたり、精肉のテナントを入れている店もあります」

 

 店舗はここ数年、年間約30店のペースで増え続けている。 

 

「不採算、赤字で閉店というケースはほとんどありません。すでにFCに加入しているオーナーさんが『これだけ利益が出るなら』と、さらに店を増やすケースが多いですね」  

 

 一般的に、FCのロイヤリティは粗利の3割以上といわれるが、業務スーパーの場合は、神戸物産からの仕入れの1%のみと異例の安さ。ここにも独自路線で店舗数が増え続ける理由がある。

 

「新しい店は、オープンしてしばらくはあまり売り上げが伸びません。しかし2年め、3年めでぐんと伸びるんです。ここがほかのスーパーとは逆ですね。

 

 業務スーパーのファンになっていただくには、半年から1年かかります。これは一般の方も業者さんも同じです。最初は試しに買ってみる。それがハマればコアなファンになってもらえる。ほかにはない独自の商品、それがうちの強みです」

 

 西田氏が「うちの強み」と言うのが独自商品のラインナップだ。ここ数年、ある商品がバカ受けしていることをご存じだろうか。

 

「最初に見たときは正直『こんなの売れないよ、お客さんをバカにしてるよ』と思ったんですよね。だって、1リットルの牛乳パックに入った水ようかんなんて誰が買うって思いますか(笑)。

 

 それがいざ出してみると、話題沸騰です。『インスタ映え』というんですか。SNSやネットニュースで取り上げられたのが大きかったですね」

 

 瓢簞から駒、というわけだが、このユニーク商品は、神戸物産の戦略から誕生したものだという。2008年以降、M&Aにより国内の食品工場を積極的にグループ化し、現在は18社で21の自社工場を抱えるまでになっている。

 

「この水ようかんを製造しているのは、もともと牛乳の工場で、ラインをそのまま使っています。こういう発想が出てくるのも、うち(神戸物産)にさまざまなジャンルの食品加工工場があるからです」

 

 多ジャンルの工場が傘下にあるため、ノウハウが集約され、それらの組み合わせで新しい商品が生まれるのだ。

 

「独自の商品で勝負するぶん、捨てるべきものは捨てる必要があります。たとえば、誰もが知る一流メーカーの商品。お客さんから『○○の商品は置いてないの?』と聞かれることも多いです。しかしそれは扱わなくてもいいんです。

 

 なんでもかんでも置いていたら、ほかのスーパーと同じ。品揃えで勝負はしないんです。まあ、あまりに安すぎて不信感を持たれることもあるんですが(笑)。馬鹿正直にベストプライスを貫く。それが業務スーパーだと思います」

 

(週刊FLASH 2018年7月17日号)

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