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卵の殻をツルンとむきたい「吉田戦車」秘密兵器は穴あけ器
ライフ・マネーFLASH編集部
記事投稿日:2018.11.07 11:00 最終更新日:2018.11.07 11:00
小学校の家庭科で習ってから50年近く、ゆで卵を作ってきているわけだが、いまだに「完璧な、世界最高のおれのゆで卵!」などといえるような「ゆで卵レシピ」は確立していないし、ツルンと殻がむけずにボロボロになったりするのはしょっちゅうだ。
若い頃に本で読んだ、きれいにむく方法はこうだった。
「ゆであがった卵をすぐに氷水にとり、しっかり冷ます」
殻の中で卵本体が縮むことでむきやすくなるのだそうで、実際かなりの確率できれいにむけた。
ただ、いちいち氷水を用意するのも、日常の台所仕事の合間にはめんどくさい。次第に「水道水そのままか、冷蔵庫で冷やした冷水に浸ける」みたいな自己流の半端な方法になり、ツルンとむける成功率は下がった。
次に何かの本で知ったのが、針、あるいは画鋲で殻に小さな穴をあける、というもの。そこから若干の湯が入り、むきやすくなるのだという。
たしかに、あけない時よりは成功率が上がる感じ。マチ針を卵の殻の穴あけ用に台所の引き出しに常備していたのだが、そのうち姿が見えなくなった。
針が行方不明になるのは怖い。ワインのコルクなどに刺して保管する台所の知恵もあるようなのだが、なんだかそこまでする気にもならない。
世の中にはそれ専用の道具があることも知っていたが、ふーんと思いつつ保留にしていた。
このエッセイの単行本の宣伝記事のために、千葉県印西市にある大型ホームセンター「ジョイフル本田 千葉ニュータウン店」に取材に行くことになった時、そのことを思い出し、あったら買おう、と思った。
東京ドーム約3.6個分という超大型ホームセンターで、そういう小ぢんまりしたものを買うのは、この連載らしいのではないか。台所用品売り場で、「たまごの穴あけくん」はあっさり買えた。税込み398円。
家の近所でも探せば買えたはずだが、これを使って卵をゆでるたびに「あの広大な、茨城県にも近いため『干しいもスライサー』まで売っていたジョイフル本田 千葉ニュータウン店で買ったもの!」という思い出がよみがえるという寸法だ。
ゆで卵を作るのは月に一、二度であり(その程度の人間が専用器具など買うな、ともいえる)、買ってから一週間後、ようやく使ってみた。
プスリ。あっ、白身が少し漏れ出た。湯に入れたら、やっぱり少し流れ出る! 青ざめたが、すぐに白身流出は止まった(その後、漏れないコツを習得)。
9分後、冷水に浸けて、緊張しつつむいてみた。流出した分、ややいびつだが、ツルンときれいにむけた!
減塩生活者らしく塩をつけずに食べながら、「しかしまあ、なんだ、針か画鋲にコルクでもぜんぜんいいかもしれないな……」と、少々思いつつ、「いやいや、千葉の思い出だから!」と首を振った。
よしだせんしゃ
マンガ家 1963年生まれ 岩手県出身 「ビッグコミックオリジナル」で『出かけ親』、「ビッグコミックスピリッツ」にて『忍風! 肉とめし』を連載中。妻はマンガ家・伊藤理佐さん。近刊に『忍風! 肉とめし 1』『来れば? ねこ占い屋』(ともに小学館)。本連載の単行本が絶賛発売中!
(週刊FLASH 2018年11月13日号)