「取材はいっさい、お受けしていません」
がん免疫療法最大手のクリニックは、本誌の取材依頼を理由も告げずにこう拒否した。
2番手といわれる別のクリニックは、いつ電話をしても「診療日の午前時から10時から17時の間にお電話ください」とのアナウンスが流れるだけ。診療実態があるのかさえ疑わしくなる。
横行するインチキ免疫療法の実態を探るべく、本誌はいくつかの大手クリニックに取材を試みた。だが結果は前述のとおり。 そんななかで、唯一、取材に応じたのが、東京ミッドタウン先端医療研究所だ。
大場大・東京オンコロジーセンター代表の協力による公開質問状に、田口淳一所長が書面で回答した。以下は、その一問一答である。
ーー貴施設では樹状細胞ワクチン療法を中心とする免疫療法を提供していますが、その理由についてお答えください。
田口 当施設では、標準治療(手術・放射線治療・化学療法)を受けることができる方には、主治医の先生のもとで必ず標準治療を受けていただくようにご本人にお伝えしています。
がんに有効、あるいは症状を抑えるという科学的根拠(エビデンス)が存在する治療法である標準治療を優先しておすすめいたします。
しかしながら、標準治療に加えて「できることを積極的に取り入れたい」「治療法がないと言われた」と悩んでいる患者様がいらっしゃるのも事実です。私たちはそのようながん患者様に対し、がん免疫療法という選択肢をご提案しています。
ーー樹状細胞ワクチン療法のほか、活性化リンパ球療法、NK(ナチュラルキラー)細胞療法などの細胞療法も実施しておられますが、それぞれの治療成績を、各がん種ごとに、具体的にお示しいただけませんでしょうか?
田口 治療データは蓄積段階にありますが、公開はしておりません。治療成績は過去の論文データでおおよそ推測できますが、患者様のご年齢や体力、症状によって変わってきますので、免疫療法の効果を示すデータとはならないからです。
ーー症状や苦痛を訴えた患者に対して、どのような対応を取っていますか? 効果がなかったことに対する苦情やトラブルはこれまでありませんでしたか?
田口 当施設では、標準治療では治療が困難になった再発・転移がんの方への治療を中心に行っています。標準治療を受けられる施設は全国にあり、お近くのがん治療拠点病院等で受けていただくほうが、遠方から来ていただくご負担等を考えますと、望ましいと考えるからです。
緩和ケアにつきましても、主治医の先生のもとでの緩和ケアをおすすめしています。緩和ケアの治療法の提示がないとおっしゃる患者様に対しては、放射線治療で緩和ケアをできる施設や、腹水ケアのできる施設、在宅緩和ケアのできる医療機関などをご紹介しています。
ーー田口所長は東京大学医学部を卒業後、総合内科専門医(循環器内科医)として宮内庁侍医などの経歴があり、「がん治療分野における研究も多数」と紹介されていますが、がん治療の実績について具体的に伺えませんでしょうか?
田口 総合内科医師としてがん患者様を担当してきています。臨床遺伝専門医でもあります。相談や治療はチームとして行っており、外科専門医として豊富ながん治療経験のある草野敏臣医師や複数のがん治療経験の豊富な医師が当施設でがん相談および免疫療法を行っています。
批判覚悟で率直に回答してくれたのは「医師としての良心」が残っていると信じたい。
だが、「まるで国会答弁のようですね」というのが、回答を見た大場医師の率直な感想だ。そして、免疫療法は、治療効果についてのエビデンスがないことを問題視する。