「既成概念の破壊者」とまで呼ばれる孫正義氏が作った、ソフトバンクグループ(SBG)。これまで「常識」とされてきた日本型雇用スタイルを覆し、いまでは当たり前になりつつある組織のシステムを、いち早く取り入れていた。
SBGは、将来を担う人材への投資に力を入れている。後継者を育成する目的で、孫氏を校長とする「ソフトバンクアカデミア」を2010年に開講。講義では孫氏が自ら登壇し、真剣な「知の総合格闘技」がおこなわれる。
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直面する経営課題を生徒全員に投げて、考え出した提案について全員で議論するという実践的な内容だ。定員は300人程度の狭き門だが、受講生に選ばれてもけっして安泰ではない。毎年、成績の下位20%について、新たな人員と入れ替えがなされる。
講義だけでなく、受講生を実際に経営の現場に放り込んで、修羅場を経験させて鍛えることも実施している。
かつてソフトウエアの卸売販売を手がける、いちベンチャーだったソフトバンク。いまは世界に名を轟かせる超巨大企業集団で、もはや孫氏ひとりが全体を管理することは難しい。
「SBGという持ち株会社の最終的な決定権を持つのは、もちろん孫さん。でも、携帯電話事業会社のソフトバンクは、同社の宮内謙社長にまかせています。
孫さんは人事以外、マネジメントには口は出しません。また、事業を立ち上げるときは自分でやりますが、軌道に乗ってからは人にまかせます」(かつてソフトバンクで社長室長を務めた嶋聡氏)
組織が巨大化していることもあり、「集団指導体制」が進んでいる。
「私が入社したころ、グループの社員数は約2000人でした。いまは関連会社が400社近く、社員数も7万人近くにもなり、全体を1人で見ることは不可能です」(別のベテラン社員)。
孫氏自身、かつてこう語っている。
「(会社組織を)管理型、支配型でなくて、自律・分散協調型にしたい。支配しようとするから中央集権になる。中央集権だから、それがボトルネックになって大企業病になる」
(週刊FLASH 2019年2月12日号)