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吉田戦車、濃いヒゲだから出会えた「カミソリ刃」に共鳴
ライフ・マネーFLASH編集部
記事投稿日:2019.02.13 11:00 最終更新日:2019.02.13 12:12
ヒゲが濃い。ヒゲが伸び始めるヤングの頃は、とうぜんそれが大きなコンプレックスだった。でも高校の同級生に「ヒゲ剃れよ」と言われた記憶があるので、それほど一生懸命処理することはなく、だいたいほったらかしにしていたようだ。
成人後にくらべればかわいいと言っていいヒゲ量であり、ヒゲ質だったと思うが、めだつほどには生えていた。
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家には父親の電気シェーバーの他に、I字型のカミソリか、1枚刃の安全カミソリぐらいしかなかった。いちおうそれらで剃ってみて、剃りづらくて放置を選んだのかもしれない。
一浪して受験の朝、東京の風呂なしトイレ共同アパートの流しで、冷水とせっけんと1枚刃で剃って、肌が傷だらけになったこともあった。
それこそ、ヒゲなんかほっといて単語の1個も覚えろと言いたいが、ヒゲは日増しに濃くなり、コンプレックスも大きくなっていたということか。
その後、革命的に剃りやすくなった2枚刃のカミソリを導入。長いこと使っていた。ヘッドが固定式の「シック スーパー2」だったと思う。
電気シェーバーも買ってみたが、肌がヒリヒリしてだめで、その後は失敗を恐れてあまり買わなくなってしまった。最近になってようやく、「これでいいや」と定着した電気シェーバーはあるのだが、それについてはまた今度。
勤め人ではないので、ヒゲは毎日剃らない。3~5日おきぐらいに、鏡の中の自分が見苦しくなってきたら剃るという感じ。
スーパー2のあと、3枚刃、4枚刃の時代もありつつ、近年定着したのが5枚刃の「ジレットフュージョン」。裏側にあるピンポイントトリマーという1枚刃の使い勝手がとてもよく、もうこれでいいやと愛用してきた。元は単4電池を入れて微振動を加えるタイプだったが、もう電池は抜いて使っている。
もうこれできまりと思いつつ、子供の幼稚園の集まりで「父兄に」とくばられたのが「シック ハイドロ5」。業者から販促商品をもらったらしい。
これが、なんというか、剃り味が革命的にちがった。お湯がいらないとまでは言わないが、あまり真剣にお湯でヒゲをやわらかくしなくても大丈夫な感じ。
無精者の無精ヒゲにはドンピシャの製品といってよく、申しわけないがここ数年、フュージョンの出番はない。業者の「幼稚園へ」という、まさかの販促が功を奏した形だ。
フュージョンも替刃と共にまだあるので、今のハイドロ替刃が切れたらまた使おうと思うくらいには、じゅうぶんヒゲの友(いや、敵か?)として満足している。
ケアがめんどくさい濃いヒゲ、という自分の宿命によりそい、軽減してきてくれた数々の刃たち。もうコンプレックスなどという若々しい感情は消え去った。「濃いヒゲのおかげで、お前たちと出会えた」と思う。
よしだせんしゃ
マンガ家 1963年生まれ 岩手県出身 「ビッグコミックオリジナル」で『出かけ親』、「ビッグコミックスピリッツ」にて『忍風! 肉とめし』を連載中。妻はマンガ家・伊藤理佐さん。近刊に本連載の単行本『ごめん買っちゃった』。そして、『忍風! 肉とめし 2』が発売中!
(週刊FLASH 2019年2月19日号)