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いつまでも地酒であり続ける…創業142年の「蔵元」の心意気
ライフ・マネーFLASH編集部
記事投稿日:2019.02.19 16:00 最終更新日:2019.02.19 16:00
夢心酒造の酒は、いつどこで飲んでも変わらない味がする。
定番銘柄の「夢心」でも「奈良萬」でも、そのなかの大吟醸だろうが純米だろうが、のびやかで落ち着いた米の旨みが根底にあり、印象が一貫して変わらない。
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日本酒は時代ごとに、淡麗辛口や甘酸っぱい酒など、トレンドの味があるのだが、流行りの味に惑わされない、酒を造りつづけている酒蔵である。六代目の東海林伸夫さんはこう言う。
「僕にとって『変わらない』は最高の褒め言葉です。でも、じつは少しずつ変えているので、そう言われると内心嬉しくて(笑)。時代によってお客さんが求める味が違うので、そこは意識しつつ、ずっと変わらない酒を造るのが目標です」
印象が変わらないのは、原料を地元のものに限定していることにも秘密がある。
酒米は会津産の五百万石、仕込み水は栂峰の渓流水、酵母は福島で開発したうつくしま夢酵母を使用。
現代は、酒米も酵母も数千の種類があり、さまざまなものを全国から仕入れることができるが、地元の原料に絞り、この土地でしかできない地酒を目指している。
だからこそ、喜多方の消費だけでも全体の42%で、県内を合わせると64%。首都圏でも夢心酒造は人気だが、地元にも根強いファンが多いのは、やはり、地酒だからだろう。
先代までは、主に醸造アルコールを添加した普通酒を造っていたが、1995年に蔵に帰った東海林さんが、奈良萬を立ち上げ、米と水だけの純米酒造りに力を入れる。
しかし、酒質は改良しても、地酒であろうとする気持ちは変わらなかった。
「先代があっての自分です。地元の人が飲んできた味を守りながらも、自分なりの味を確立していきたいと思っています」
<蔵元名>
夢心酒造(福島)
創業142年(1877年)
<銘柄>
夢心・奈良萬
(ゆめごころ・ならまん)
<社訓>
常に異なり、常に変わらない酒
福島県喜多方市字北町2932
http://www.yumegokoro.com/index01.html
温度管理できる麴の部屋から米麴を出す「出麴」という作業。蔵人たちは絶妙な掛け合いで布に麴を包み、担いで別の場所へと運ぶ
取材・文/山内聖子
写真/三浦英絵