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【食堂のおばちゃんの人生相談】50歳・会社員のお悩み
ライフ・マネーFLASH編集部
記事投稿日:2019.07.26 11:00 最終更新日:2019.07.26 11:00
「食堂のおばちゃん」として働きながら執筆活動をし、小説『月下上海』で松本清張賞を受賞した作家・山口恵以子。テレビでも活躍する山口先生が、世の迷える男性たちのお悩みに答える!
【お悩み/ソックスさん(50)会社員】
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定食屋さんなどで、食べ終わった後もだらだらスマホをいじっている客を見ると、イライラして仕方ありません。待っているお客がいなくても、「食い終わったらとっとと帰れ!」と心の中で叫んでしまいます。
子供のころからそういうふうに教えられてきたせいもありますが、どうしたらこの狭い了見を直すことができるでしょう?
【山口先生のお答え】
直す必要なんかありません。私も大賛成です。あなたの考えは “狭い了見” じゃなくて “良識” です。TPOとは時間・場所・場合という意味で、正しい作法の基準になる考え方です。日本でも昔から「時と場所を考えろ」って言いますよね?
そもそも、定食屋とかラーメン屋というのは、ササッと食べて、食べ終わったらさっさと帰るべき場所なんです。だって、サマにならないでしょ。空になった丼を前に、スマホをいじりながらいつまでも居座ってる客って、どう見てもアホですよね?
これが喫茶店とかバーなら良いんですよ。昔から喫茶店で原稿を書く小説家はいたし、名曲喫茶には一杯のコーヒーで一日中クラシックを聴いているお客がいたものです。
品の良いバーで、空になったグラスを見つめながら煙草を吸っている男って、絵になります。ムード歌謡の歌詞にも出てきそうじゃありませんか。
ポイントは喫茶店もバーも、食べ物じゃなくて飲み物メインの店という点です。だからってジューススタンドで粘られたら困りますが、食べ物屋さんは全て、食事が終わったお客さんに長っ尻されるのは迷惑なので、速やかに席を立ってあげて下さい。
まあ、フレンチレストランでコース料理を食べたら2時間くらい掛かりますけど、食事が済んだらラーメン屋さんと同様、すぐ帰りましょう。
そうそう、ちんたらして良い例外が一つだけ。昼下がり(つまり、空いてる時間)の蕎麦屋です。昼下がりの蕎麦屋で盛りをたぐりつつ冷や酒を呑む池波正太郎チックな時間は、大人の楽しみですよ。
私がそれで角川春樹さんの手管にはまって『食堂』シリーズを書いた経緯は『おばちゃん街道』(清流出版)に。宣伝しちゃってごめんね。
やまぐちえいこ
1958年、東京都生まれ。早稲田大学文学部卒。就職した宝飾会社が倒産し、派遣の仕事をしながら松竹シナリオ研究所基礎科修了。丸の内新聞事業協同組合(東京都千代田区)の社員食堂に12年間勤務し、2014年に退職。2013年6月に『月下上海』が松本清張賞を受賞。『食堂メッシタ』『食堂のおばちゃん』シリーズ、そして最新刊『夜の塩』(徳間書店)が発売中