「夫婦の毎月の年金収入が約21万円なのに対して、支出は約26万円。老後30年間では約2000万円が必要となる」
2019年6月に発表された、金融庁金融審議会の報告書は、「老後2000万円不足問題」として多くのメディアが取り上げ、社会問題となった。
「私はむしろ、ずいぶん親切な報告書だったと思います。現実的なプランが立てられていましたから」
そう語るのは、横山光昭氏。これまで1万人以上の投資初心者を成功に導いた家計再生コンサルタントだ。
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「2019年度の公的年金の平均受給額は、自営業者が6万5008円。会社員・公務員が22万1504円(妻が専業主婦の場合)。現役世代が将来もらえる年金額は、その7、8割になると考えたほうがいいでしょう。自力で老後の資金を準備しなければならないのです。
そのためには、手数料などのコストが安くリスクは低いけれども、15年から20年の長期で見ると利回りが比較的高い『投資信託』をコツコツ買うことです。この投資方法を、いますぐ始めるべきです」
「思わせぶりな解説記事は読み飽きた、ズバリ言ってくれ!」という初心者に、横山氏がすすめるのが、「楽天・全世界株式インデックスファンド」だ。
「米国の投資運用会社・バンガード社が販売している『バンガード・トータル・ワールド・ストックETF(通称・VT)』という商品を投資対象にしたもので、2017年9月から購入できるようになった画期的なファンドです。
VTは、“世界最強の商品” といわれ、過去の実績では年平均6%程度のリターンを確保しています。世界の株式の95%をカバーしており、いわば “世界経済の成長に投資する” ようなものなので、売り買いはする必要がなく、ほったらかしておけばいいのです。手数料などを含むトータルコストも、約0.22%と安い」
「iDeCo(個人型確定拠出年金)」「つみたてNISA」で、この商品が選べるのが楽天証券だ。
「毎月、銀行口座から一定額が引き落とされて投信を買い増ししていくため、いちいち購入のタイミングを考える必要がありません。そして、運用益が非課税になる『つみたてNISA』か『iDeCo』の口座を開設し、そのなかで投資を始めることが大事です。
どちらも、金融庁の肝煎りで始まった制度で、国が資産形成のための環境を用意してくれているようなもの。利用しない手はありません」
iDeCoは、節税しながら老後の資金を作れるのが最大のメリット。あなたがまだ40代未満なら、60歳まで最長20年間以上も投資を続けられるため、節税効果が大きくなる。
「運用益が非課税になるだけでなく、掛金も全額所得控除になるのが魅力です。上の表のように、企業年金に入っていない40歳の会社員が月に2万3000円を20年間積み立てたら、節税額は計151万円。少しハードルは高いですが、この効果は大きいです」
もし50代以上なら、iDeCoの利用には留意すべき点があるという。
「iDeCoは基本的には、60歳までしか積み立てできません。50代で始めると、積み立て額がさほど大きくならず、かつ運用できる期間が短くなります。つまり、大きな利益を得るのは難しいでしょう。節税効果だけを望むなら、ありかもしれませんが……」
そのため50代以上は、年齢のデメリットがない「つみたてNISA」を選ぶべきだという。
「楽天証券なら、月に100円から投資できますし、いつでも売却・出金が可能です。運用益が非課税になる投資枠は、年間40万円で最長20年間・800万円まで。55歳から始めて、75歳まで投資するのも十分可能で、約59万円の節税になります。
ただ、注意しなくてはいけないのは、『NISA』の口座と『つみたてNISA』の口座は、同時に持てないこと。間違ってNISAの口座を選ばないよう、注意しましょう」