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『江戸前の旬』原作者が語る「寿司はどれから食べるべきか?」

ライフ・マネーFLASH編集部
記事投稿日:2020.01.06 16:00 最終更新日:2020.01.20 11:33

 

『江戸前の旬』原作者が語る「寿司はどれから食べるべきか?」

 

 ただ、「白身から食べよう」という風潮が広まっている理由もある。

 

「新鮮な魚を寝かせずに、そのまま出す店が多いからだ思います。新鮮なままだと、甘みも旨味も足りないので、たしかに淡白かもしれない。ちょっと熟成させるだけで旨味は強くなるんですが、そうしていないということ。

 

 とくに地方のお寿司屋さんは、タネを朝買ってきて、そのまま使いますから、淡白と思っているのかも。最近、東京で『熟成ずし』がちょっとしたブームですが、それでも地方にはあまりないのは、お客さんの “新鮮好み” に合わせているからです」

 

 実際に地方では、こんなケースもある。

 

「新鮮な魚貝類をそのまま食べる文化の函館(北海道)の、とある大きなお寿司屋さんの若旦那が、東京で修行しました。その人が、『函館に帰って、ちょっと寝かせたタネを出したら、最初はすごく不評でした』と言っていて。

 

 函館では、江戸前の熟成の基本ともいえる、シンコやコハダ(ともにコノシロの幼魚、若魚)も食べられていません。そもそも北海道では獲れないので、その若旦那は、築地から仕入れてシンコを出していた。

 

 シンコやコハダ、それからマグロなんかは、だいたい東京に一番いいものが集まります。そうしたタネは、地方のいいお寿司屋さんですと、近くの魚河岸ではなく、築地から直接仕入れていることが多いですね。

 

 ちなみに、函館の若旦那が握ったお寿司でいちばん美味しかったのは、漫画でも何回も描いていますが、タラコの握りです。タラコを切って、形づくりのためのシソの葉に乗せて、握って出してくれるだけの寿司。ただ、タネのタラコは、わざわざ業者に頼んで、自分の好みに塩加減にしてもらったそうです。市場に出ているタラコを出すと、しょっぱすぎるから」

 

「白身から」以外にも、「“お決まり” は左手前から食べよう」という説も普及している。

 

「これはたしかに本当で、寿司屋で “おきまり” を出すときは、『左端手前から食べるように』と置くそうです。そして、そこに白身が置いてあることが多いのも、『白身から食べるように』という “迷信” が広まった理由のひとつです。

 

 でも、トロから食べようがウニから食べようが、そんなの勝手ですよね。個人的には、『なんのためにお茶やガリがあるんだ!』と思います(笑)。

 

 そうそう、お店によっては “おまかせ” でもトロから出すところもあります。『うちのトロはどうだ!』という、喧嘩腰の姿勢らしいんですが(笑)。

 

 そういうお店にかぎって、『お前のところはどんな寿司を出すんだ』と、挑戦したがるお客さんが来る(苦笑)。“決戦” に居合わせてしまったら、そそくさと退散しましょう。寿司屋はあくまで、会話もふくめて “楽しむ場” というのを大切に!」


つくもしん
青森県出身 漫画原作者 作画担当のさとう輝先生とコンビで週刊漫画ゴラクで連載中『銀座「柳寿司」三代目 江戸前の旬』、スピンオフ作品の『寿司魂』『旬と大吾』『ウオバカ!!!』などを執筆。メディアへの出演は、連載20年で「ほとんどない」そう

 

(C)九十九森/さとう輝・日本文芸社

 

※『江戸前の旬DELUX』1巻が、日本文芸社より2020年1月29日に発売

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