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『江戸前の旬』原作者が語る「寿司ダレはスポイトで1滴!」
ライフ・マネーFLASH編集部
記事投稿日:2020.01.20 16:00 最終更新日:2020.01.20 16:00
マンガ雑誌『週刊漫画ゴラク』(日本文芸社)で、1999年から今も連載が続く、“老舗” の寿司漫画『江戸前の旬』。寿司の具である “タネ” のエピソードを中心に、すでに100巻が発売されている。原作者の九十九森先生が、「寿司ウンチク」を存分に語ってくれた。
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「職人の仕事に『絶対的な正解』はなくて、すべては店の味をどう表現するか。ただ、客として好き嫌いはありますよね。たとえばコハダがイメージしやすいと思いますが、酢につけておく時間とか。
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でもじつは私自身、あまりコハダが美味しい店って知らないんです。あくまで個人的にですが、銀座の『太一』のコハダはめちゃめちゃ美味しい。それ以上のコハダって、食べたことがありません。だから結局、『好みの仕事をする店を見つけられるか』なんですよ」
店の味は、タネに関するものだけではない。
「醤油だと思っていらっしゃる方も少なくないと思いますが、“つけダレ” にあたるのは『煮きり』といって、醤油にカツオや昆布の出汁をとったものです。そしてもちろん、しょっぱめのところ、カツオや昆布の旨味が強いところなど、店によって主張があります。
ただ、味の違いよりも大切なのは、煮きりを寿司につけるときには “適量” があるということ。私の感覚ですと、それはスポイトで1滴です。あまりつけすぎると醤油っぽくなって、醤油の味しかわからなくなってしまう。ハケで『ちょん』とさわるぐらいが、ちょうどいいんです。
醤油皿につけて食べられる方が多いと思いますが、それだと醤油を味わっているに等しい。マグロのヅケに、醤油をつけて食べられている方もお見かけしますが、『おいおいおい』と(笑)。ぜひ、煮切りの量を気にしてみてください。そうすると、食べているときの様子も、上品になりますよ」
最近では、煮切り以外のタレを使う食べ方も普及してきた。
「これも好みではありますが、塩とすだちで白身なんかを食べさせるのは、私は反対です。塩の粒がはっきりわかって、食感がトゲトゲしてしまう。
一方、たとえば『太一』では、最初に昆布出汁を炊いて、少し煮詰めて “出汁塩” のような調味料を作ります。それを白身に塗って出してくれるんですが、そうするとウマい。日本料理には昔からある手法ですが、それを寿司でやっているところは、あまりないですね」