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【食堂のおばちゃんの人生相談】47歳・会社員のお悩み

ライフ・マネーFLASH編集部
記事投稿日:2020.01.24 11:00 最終更新日:2020.01.24 11:00

 

「食堂のおばちゃん」として働きながら執筆活動をし、小説『月下上海』で松本清張賞を受賞した作家・山口恵以子。テレビでも活躍する山口先生が、世の迷える男性たちのお悩みに答える!

 

【お悩み/坂の上さん(47)会社員】
 10年来、通い続けているビストロの店主が病気で入院し、息子がシェフになったら、味が変わってしまった。一時は通っていたのだが、今の味なら半年に1回で結構。通うのを止めるか、月1回通って「味が落ちた」と直言すべきか、迷っている。

 

 

【山口先生のお答え】
 あらら、なんて身につまされるお悩みでしょう。実は家の近所に25年以上通っていた中華屋さんがあるんです。小さな街の中華屋ですが『ソロモン流』のロケではあの船越英一郎さんも「美味いですねえ」とマジ食いしたくらい美味しい店でした。

 

 それが数年前、急に味が変わってしまったんです。厨房を覗いたら長年腕を振るっていたシェフが替わっていて、おまけにホールの女性まで別人に。25年以上同じメンバーで営業していたのに、突然何故? どうして? ちなみに、お店の方は全員中国人です。

 

 その直後、夜道で犬の散歩をしていた奥さんに「山口先生ですよね?」と呼び止められ、何故かその店の話になって「あれからますます味が落ちたんですよ」「ええっ!」「うちはもう行きません」「うちもです」と、お互い初対面なのに延々30分も立ち話をしてしまいました。ご近所ではそれほど重大な事件だったんです。

 

 まあ、そんなわけで、私は通うのを止めてしまったんですが、坂の上さんの場合、父シェフが復帰したらまた通いたいと思っているんですよね? それならあんまりつれなくしない方がいいのでは?

 

 月に一回が負担なら、2カ月に一度くらいのペースに落として、正直な感想を直言して差し上げたらよろしいと思いますよ。その場合、多分息子シェフも味が落ちているのは自覚していると思うので、なるべく具体的に「ソースのコクがない」「肉の火の通し方が拙い」等と忠告なさるのがお勧めです。

 

 この店だけでなく、料理店は息子の代になると必ず「味が落ちた」という評価が下されるようです。だから代々続いている名店では、先代の味を忠実に再現するのは勿論、常にワンランク上を目指して努力が欠かせないのだとか。まさに「継続は力なり」ですね。


やまぐちえいこ
1958年、東京都生まれ。早稲田大学文学部卒。就職した宝飾会社が倒産し、派遣の仕事をしながら松竹シナリオ研究所基礎科修了。丸の内新聞事業協同組合(東京都千代田区)の社員食堂に12年間勤務し、2014年に退職。2013年6月に『月下上海』が松本清張賞を受賞。『食堂メッシタ』『食堂のおばちゃん』シリーズ、そして最新刊『夜の塩』(徳間書店)が発売中

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