「健康診断の数値に、とらわれる必要はありません」
東海大学名誉教授の大櫛陽一氏は、そう断言する。
大櫛氏は2004年、全国約70万人の健康診断結果から、男女別・年齢別の “正しい基準範囲” を独自に割り出した。その後も、現在まで追跡調査をおこない、多くのデータから、日本の健康診断の基準が、いかに非常識かを明らかにした。
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糖尿病の目安となるのが血糖値だ。「空腹時血糖値」100以上、測定日から1~2カ月前の血糖値を反映した「HbA1c」が5.6以上で、糖尿病が否定できない。
大櫛氏の基準はそれより緩いが、こと血糖値に関しては、現行基準も意識したほうが賢明だという。
「糖尿病は、血糖値が上がらないうちに早めに手を打てば、そのぶん、予防効果が高まります。数値自体も大事ですが、数値が上がりつづけないように気をつけるべきです」
糖尿病の治療には、インスリン分泌促進剤が使われるが、薬が弱った「すい臓機能」に追い討ちをかける危険性がある。
「運動や糖質制限で、薬に頼らずに血糖をコントロールできます。生活習慣を見直すだけで、効果が期待できます」
酒飲みにとって気になるのが肝機能。肝臓の状態を知る指標のひとつが、「γ-GTP」だ。現行基準は51以上。大櫛氏のすすめる数値も同水準だ。
「肝臓は “沈黙の臓器” といわれ、症状を自覚しにくいのです。重症化しないように、現行基準を守ったほうがいいでしょう」
風が吹いても痛いといわれる痛風。その原因となる「尿酸値」も気になるところだが、7.1以上という現行基準に対し、大櫛氏の上限数値は「55歳で8.3」と少し余裕がある。
「命に関わる病気ではありません。むしろ、数値が高いからといって、症状もないのに、むやみに薬を処方することには疑問を感じます」
これまでの “常識” は、疑ったほうがいい。
【HbA1cの正しい基準範囲】※現行基準/5.6以上で異常
・40~44歳/4.6~5.9
・45~49歳/4.7~6.0
・50~54歳/4.7~6.1
・55~59歳/4.8~6.1
・60~64歳/4.8~6.2
・65~69歳/4.8~6.2
【血糖の正しい基準範囲】※現行基準/100以上で異常
・40~44歳/81~112
・45~49歳/82~114
・50~54歳/82~115
・55~59歳/82~117
・60~64歳/82~116
・65~69歳/81~116
【γ-GTPの正しい基準範囲】※現行基準/51以上で異常
・40~44歳/5~53
・45~49歳/5~54
・50~54歳/5~57
・55~59歳/8~51
・60~64歳/8~49
・65~69歳/8~48
【尿酸の正しい基準範囲】現行基準/7.1以上で異常
・40~44歳/3.9~8.5
・45~49歳/3.8~8.5
・50~54歳/3.7~8.4
・55~59歳/3.6~8.3
・60~64歳/3.6~8.3
・65~69歳/3.6~8.3
おおぐしよういち
1947年生まれ 大阪府出身 「大櫛医学情報研究所」所長 2004年、日本総合健康健診医学会シンポジウムで、今回紹介した日本初の男女別・年齢別基準範囲を発表
※本文中の調査結果は、大櫛氏による
※年齢別の数値は、大櫛陽一著『健康診断「本当の基準値」完全版ハンドブック』(宝島社)より
(週刊FLASH 2020年2月4日号)