「健康診断の数値に、とらわれる必要はありません」
東海大学名誉教授の大櫛陽一氏は、そう断言する。
大櫛氏は2004年、全国約70万人の健康診断結果から、男女別・年齢別の “正しい基準範囲” を独自に割り出した。その後も、現在まで追跡調査をおこない、多くのデータから、日本の健康診断の基準が、いかに非常識かを明らかにした。
【関連記事:「腹囲85cm以上がメタボ」に根拠なし…100cmまでは気にするな】
脂っこい食べ物に多く含まれ、血液をドロドロにするといわれるコレステロール。HDL(善玉)とLDL(悪玉)の現行基準は、それぞれ39以下と120以上だが、大櫛氏の基準はかなり緩い。
「コレステロールは、細胞膜やホルモンの材料として体に欠かせない物質で、少々、数値が高くても問題ありません。それどころか、コレステロール値が高いほうが、死亡率が低くなることが判明しています」
神奈川県伊勢原市の2万2099人を追跡調査した結果、男女とも「コレステロールレベルが高いほど、総死亡率が低い」という結果になった。がん・肺炎・脳卒中でも、コレステロール値が高いほど死亡率が低かった。
検査で引っかかると薬を処方されるが、見過ごせないのが「薬の副作用」だという。
「悪玉コレステロールを低下させる『スタチン系薬』は、筋肉の融解や糖尿病、ALS(筋萎縮性側索硬化症)を引き起こす副作用が報告されています」
数値よりも薬の副作用のほうがよっぽど怖い。
【LDL-C(悪玉コレステロール)の正しい基準範囲】※現行基準/120以上で異常
・40~44歳/65~181
・45~49歳/67~183
・50~54歳/67~185
・55~59歳/68~186
・60~64歳/72~183
・65~69歳/72~180
【LDL-C(善玉コレステロール)の正しい基準範囲】※現行基準/39以下で異常
・40~44歳/28~79
・45~49歳/32~75
・50~54歳/31~77
・55~59歳/27~84
・60~64歳/26~85
・65~69歳/29~81
おおぐしよういち
1947年生まれ 大阪府出身 「大櫛医学情報研究所」所長 2004年、日本総合健康健診医学会シンポジウムで、今回紹介した日本初の男女別・年齢別基準範囲を発表
※本文中の調査結果は、大櫛氏による
※年齢別の数値は、大櫛陽一著『健康診断「本当の基準値」完全版ハンドブック』(宝島社)より
(週刊FLASH 2020年2月4日号)