特別養護老人ホーム(特養)への入所待ちの人数は、32万人超――。2019年4月、厚生労働省の調査で判明した、衝撃の数字だ。現在の我が国は、多くの “介護難民” が存在する、深刻な状況に陥っている。
「多くの家庭では、親が “要介護状態” になって、初めて介護を真剣に考えます。しかし、それから急に探しても、短期間でいい介護施設が見つかる可能性は低いんです」
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そう警鐘を鳴らすのは、20年間で300回以上の施設を見学してきた畠中雅子氏。「高齢期のお金を考える会」を主宰し、介護施設に関する資金アドバイスをおこなうファイナンシャル・プランナーだ。
ではどうすれば、いい介護施設を探せるのか。「5カ条」を聞いた。
【介護施設探しの「5カ条」】
(1)施設探しは、“情報戦” と心がけよ
(2)いい施設ほど広告が少ない
(3)親が倒れてからでは遅すぎる
(4)施設の見学では必ず “試食” せよ
(5)立地にはこだわるな
具体的に見ていこう。
「まず、CMやネット広告を安易に信じないことです。これだけ入居待機者が多い時代に部屋が空いているということは、費用が高額か、あるいは “よくない” 施設だという可能性が高い。人気の高い施設ほど、広告は出しません」
じっくり探すためには、なにより時間が必要だ。
「『親が倒れてからでは遅すぎる』と肝に銘じてください。いますぐ、親が元気なうちに、一緒に施設の見学へ行きましょう。
施設にネガティブなイメージを持っていて『絶対に入りたくない』という高齢者もいますが、見学してみると、考えが変わることもあります」
できれば、「複数の施設を見学すべきだ」と畠中氏は言う。
「少なくとも、5~6施設は見てください。見学することで、『介護付有料老人ホーム』がいいのか、『サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)』がいいのか、という具体的なプランが見えてきます。
そして、同じジャンルの施設のなかでも、自分なりの基準をもって比較ができるようになる。施設探しは、地道な “情報戦” なんです」
見学の際には、施設のどこを見るべきなのか。
「まずは、“人” です。入居者と職員が、どんな雰囲気で会話しているのか。職員に余裕がない施設は、挨拶さえしないこともあります。
また、2度3度と行ってみて、職員が頻繁に変わっているようだと要注意です。いい施設では、入居者が見学者に、わざわざ『ここはいいですよ』と教えてくれるところもあります。
あとは、食事です。毎日食べるものですから、味はどうなのか、見学の際に必ず試食するべきです。以前見学したとある施設は、厨房に包丁さえありませんでした。朝からレトルトのどんぶりでご飯を出していたんです。その後、その施設では職員による殺人事件が起きました」