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『江戸前の旬』原作者が語る「寿司と天ぷらの決定的な違い」
ライフ・マネーFLASH編集部
記事投稿日:2020.03.30 16:00 最終更新日:2020.03.30 16:00
マンガ雑誌『週刊漫画ゴラク』(日本文芸社)で、1999年から今も連載が続く、“老舗” の寿司漫画『江戸前の旬』。寿司の具である “タネ” のエピソードを中心に、すでに100巻が発売されている。原作者の九十九森先生が、「寿司ウンチク」を存分に語ってくれた。
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「江戸前の寿司の “聖地” といえば銀座。私の漫画『江戸前の旬』の舞台でもありますが、銀座に物件を借りてお店を営業しようとすると、まず500万円から1000万円ほどの『保証金』がとられます。店をやめたら返してはもらえますが、1店を立ち上げるイニシャルコストとしては、とても重いもの。
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漫画の取材でお世話になっている『てんぷら 近藤』(銀座)の店主・近藤(文夫)さんが最初に出店するときは、『保証金1億円』と言われたそうです。取材させてもらったときに、むしろ銀座出店の “ふところ事情” をたっぷり教えてもらいました(笑)」
『江戸前の旬』では、主人公が寿司のヒントにする「和食ネタ」もたくさん取り上げてきた。
「ちょっと脱線しますが、近藤さんは、『野菜の天ぷら』を初めて作った人だと言われています。もちろんそれまでも、『精進揚げ』の形では存在していました。ただ、ズッキーニを湯葉ではさんで揚げるといった、グルメとしての野菜の天ぷらは、近藤さんが始められたと。
『メニューを作るときに味見するんですか?』と聞いたら、『しねえよ。何をどう揚げればどうなるか、だいたいわかる』とおっしゃっていましたね(笑)」
『てんぷら 近藤』の店の内部は、近藤氏側と弟子側と、2つにわかれている。
「先日、お弟子さん側に行ったら、天ぷらを出す『間』が違いましたね。銀座の高級寿司店『やまだ』の親方も、『近藤さんの仕事はすごく早い』と言っていました。
天ぷらは待つ時間のぶんだけ、期待値が高まってしまうもの。『素早く提供するのが大切なんだな』と、そのとき実感しました。
対してお寿司は、ひとりでやっている場合も多いですし、遅くてもイライラするだけ(笑)。だから、2貫ずつ出したりするんでしょうね。職人が少ないから、2貫ずつ出しておけば、そのあいだにほかのお客さんの注文を聞けます。勘定も、2貫ずつのほうが楽ですしね。
昔は必ず2貫ずつ出していて、『1貫ずつ、お願いできませんか?』と言っても、『うちは2貫ずつしかやってないんで』と断られていた。最近は高級店でも、1貫ずつでも大丈夫なところも増えてきました」
つくもしん
青森県出身 漫画原作者 作画担当のさとう輝先生とコンビで週刊漫画ゴラクで連載中『銀座「柳寿司」三代目 江戸前の旬』、スピンオフ作品の『寿司魂』『旬と大吾』『ウオバカ!!!』などを執筆。メディアへの出演は、連載20年で「ほとんどない」そう
(C)九十九森/さとう輝・日本文芸社
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