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『江戸前の旬』原作者が語る「ヒラメよりカレイこそが絶品」
ライフ・マネーFLASH編集部
記事投稿日:2020.04.13 16:00 最終更新日:2020.04.13 16:00
マンガ雑誌『週刊漫画ゴラク』(日本文芸社)で、1999年から今も連載が続く、“老舗” の寿司漫画『江戸前の旬』。寿司の具である “タネ” のエピソードを中心に、すでに100巻が発売されている。原作者の九十九森先生が、「寿司ウンチク」を存分に語ってくれた。
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「ウマい白身魚の代表が、ヒラメ。かつてヒラメは『鮮度がいいものがウマい』といわれていたんですが、のちに4〜5日寝かせたほうが、旨味が強くなってウマいことがわかりました。
専門書にも『寝かせて1日』と書いてありますし、私の作品でも昔『熟成に向かない』と描いてしまったんですが、漫画の相談をする銀座『やまだ』の親方に否定されました。熟成ヒラメを食べさせてもらったら、『なんだウマいじゃないか』って(笑)。
個人的に、ヒラメにはわさびが合わないと思っています。わさびが苦く感じるんですよ。お店でもあまり理解されないんですけど(笑)」
ヒラメとよく比べられるのが、カレイだ。
「『なぜカレイは刺し身で食べないのか』って、いつだったかテレビでやっていたんですよ。『ん?』と思いながら見ていると、『カレイはヒラメと比べて生臭い。だからカレイの寿司もない』というんですが、『え! 食べてるじゃん』とツッコんだ(笑)。
『ホシガレイ』『マツカワガレイ』『マコガレイ』なんかは、ヒラメより高いです。ホシガレイは1匹何万円もして『カレイの王様』と呼ばれていますし、それに匹敵するマツカワガレイも、天然ものは相当高い。それから、夏場のマコガレイは、最高にウマいです」
高級魚として知られるヒラメには、注意すべき点がある。
「ヒラメは、だいたい春先から産卵して、夏場に身が痩せるんですよ。ただ、青森のほうでは海水温が低いので、遅い時期まで脂がのったヒラメが食べられる。産地でいうと、大間なんかが有名です。
そういう地域で獲れたものじゃないヒラメを、5〜6月に痩せた身で出すお店もあります。そういうところは、だいたい『白身といえばヒラメでしょう』という固定観念で凝り固まっている。『うちはカレイは置いていません』とか、形式だけを優先した感じですね。
『カレイは下、ヒラメが上』という人は、寿司屋でもお客さんもいますが、『バカだなー』と思いますね(笑)」
一方、カレイがヒラメに劣るケースもある。
「エンガワは別です。ヒラメはいいんですが、カレイのエンガワって泥臭くてあまり美味しくないんですよ。でも回転寿司では、カレイのエンガワを使っているところが多い。
昔の回転寿司のエンガワは、『カラスガレイ』という、体長1mぐらいの魚のものだったんですが、回転寿司がエンガワのためにこぞって使い始めて高騰して、いまは別の大型のカレイを出している。だから、脂っぽくて真っ白ですよね。
対して、ヒラメのエンガワって、透明に近い琥珀色。サイズも幅1.5cmぐらいしかとれなくて、回転寿司で見るものよりも小さい。だから高級店では、常連さんにツマミで出すぐらいしかできないんですよ。小さいシャリだったらできるかもしれませんが、エンガワを楽しむなら、握りにする必要はありませんしね」
つくもしん
青森県出身 漫画原作者 作画担当のさとう輝先生とコンビで週刊漫画ゴラクで連載中『銀座「柳寿司」三代目 江戸前の旬』、スピンオフ作品の『寿司魂』『旬と大吾』『ウオバカ!!!』などを執筆。メディアへの出演は、連載20年で「ほとんどない」そう
(C)九十九森/さとう輝・日本文芸社
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