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女子アナ横井弘海の「エンタメ時間」横浜中華街160年、住人たちに思いを馳せる
芸能・女子アナFLASH編集部
記事投稿日:2021.05.14 16:00 最終更新日:2021.05.14 16:00
横浜市中区の横浜ユーラシア文化館で、中華街の誕生から現在まで160年あまりの歴史を振り返る企画展「横浜中華街160年の軌跡 この街が、ふるさとだから。」(7月4日まで)が開催されています。
私の母の実家は横浜なので、子供の頃、法事など親戚が集まる行事でよく中華街に行きました。今もスポーツ観戦やコンサートなどで横浜近辺に行くたび、中華料理が食べたくなります。
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中華街はいつも美味しくて楽しい記憶とともにあります。でも、そこに暮らす人びとの歴史や暮らしを想像したことはなく、展示は逆に新鮮で興味深く感じます。
横浜の開港は1859年。中国との貿易に携わっていた欧米の商社が、外国人居留地に商館を建て、商人やコック、使用人、大工など多くの中国人を従えて、日本にやってきました。1871年には日清修好条規が締結。中国との貿易が盛んになり、山下町に中華街の形態が整えられていきます。
外国人居留地は1899年に廃止され、外国人はどこにでも住めるようになり、日本人のなかにも、中華街に移り住んで店を開く人が出てきました。
横浜は、関東大震災、第2次世界大戦という壊滅的な被害を乗り越えますが、大きな転機となったのは、1972年の日中国交正常化です。中国の改革開放政策以降、来日する「新華僑」の進出が著しくなりました。「老華僑」と呼ばれる昔から中華街にいた人たちが後継者不足などで閉店する一方、新華僑経営の店舗が増えているのです。
「ここ10年の間に、貴重な資料が中華街の皆様から寄贈されました」と、企画を担当した伊藤泉美副館長が教えてくれました。
2010年に閉店した中華料理店「安楽園」の円卓や食器、2013年に閉店した漢方薬局「大徳堂」の看板には、時代の転換期を見るような寂しさを感じます。中国人洋裁店の展示や華僑が製造した100年以上も前のピアノには活気あふれる外国人居留地の往時の姿を連想しました。
「日本には、この国で生まれ育ち、ふるさとと思う外国ルーツの人たちが大勢います。その象徴的な存在が、幕末からの歴史をもつ横浜中華街に暮らす人々だと思い、今回の展示を企画しました。
サブタイトル『この街が、ふるさとだから。』には『はまっこチャイニーズ』たちの思いを込めました。観光だけではない、横浜中華街の歴史と暮らしを知ってほしいと意図もあります」(伊藤副館長)
中華街に生きる人たちはみなさん元気です。代表的な6人を紹介するパネル展示があり、そのうちの一人、1940年に中華街で生まれた2世、曽徳深さんにもお話を伺いました。
横浜山手中華学園理事長、横浜華僑総会顧問、横浜関帝廟理事、横浜媽祖廟理事などを務める中華街の重鎮で、2008年まで隔月発行されていた『横浜中華街万華鏡「豆彩-TOUSAI」』の発行人。まさに中華街の生き字引のような方です。
近年、老華僑が閉店する理由を「飲食店は大変な仕事。長時間労働を余儀なくされます。うちは長女と三女が後継者になってくれましたが、親としては子供に留学させたり、医者になってもらえたら、と考えるでしょう」と話す曽さん。
一方で、中華街を愛する言葉が続きます。
「東京に行くことがありますが、桜木町駅に着くとホッとするのです。ここで生まれ育っているから、みんな知り合いだし、ゆりかごというか、へその緒でつながっている気がします。父は広東省出身ですが、そちらとは地下水脈でつながっている感覚かな。
世界中に中華街があり、たいていみんな、国を出たらまずそこの中華街に行き、成功したらそこを離れる。でも横浜は違います。成功したら、ここに店を出したいと考えるのです。中華学校も関帝廟もコミュニティもあるからかもしれません」
横浜と聞くと、今や多くの人がみなとみらいと中華街を思い出すと笑う曽さんに、ふるさとへの誇りを感じました。
帰り道、横浜中華街に住む大陸系と台湾系両派の協力で再建された華僑の心のよりどころ「関帝廟」にお参りしました。豪華絢爛な関帝廟をバックに、中国の若者たちが階段でポーズを取っています。
おみくじを引いたら「中吉の下」。「もう一回引いたらダメ?」と尋ねると、「神様が気を悪くされるので今日はやめたほうがよい」と言われました。「でも、もし気に入らなければ、(信徒が神明に捧げる金紙を燃やす)『金炉』に入れて、燃やしてしまえばいいですよ」と一言。その割り切り方がいい。やはり中華街は楽しいな。
●横井弘海(よこいひろみ)
東京都出身。慶應義塾大学法学部卒業後、テレビ東京パーソナリティ室(現アナウンス室)所属を経てフリー。アナウンサー時代に培った経験を活かし、アスリートや企業人、外交官などのインタビュー、司会、講演、執筆活動を続ける。旅行好きで、訪問国は70カ国以上。著書に『大使夫人』(朝日新聞社)