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映画『すずめの戸締まり』雀神社で聞いたヒロインのネーミングの由来/女子アナ横井弘海の「エンタメ時間」
芸能・女子アナFLASH編集部
記事投稿日:2022.11.19 17:31 最終更新日:2022.11.19 17:33
新海誠監督の最新作『すずめの戸締まり』が公開されました。『君の名は。』『天気の子』ですっかり新海ファンになった身としては、一刻も早く見に行かねばと思い、朝8時すぎに劇場へ。美しい映像とストーリーに込められた思いに涙、涙。
1700人を超えるオーディションから選ばれたヒロイン・すずめの声は原菜乃華、イケメン青年・宗像草太には声優初挑戦の「SixTONES」の松村北斗。神木隆之介、花澤香菜、深津絵里、松本白鸚ら、声優陣は豪華です。さらに、300万人限定の入場者プレゼント『新海誠本』もゲットして、ご満悦でした。
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ストーリーを少しだけお伝えしておくと、九州の静かな町で暮らす17歳の少女・岩戸鈴芽(すずめ)が、「扉を探している」と言う草太に出会うところから物語が始まります。
彼の後を追ったすずめは、山中の廃墟に立つ古ぼけた扉を見つけ、何かに引き寄せられるように扉に手を伸ばして開けてしまいます。実は、日本各地の廃墟に残る「扉」の向こう側から災いが訪れるという設定。そして、草太は、扉を閉めて鍵をかけることで災いを防いできた、代々の「閉じ師」でした。
2人の前に突如現れる謎の猫・ダイジンは大事な役どころです。ダイジンは草太を椅子の姿に変えてしまいます。その椅子はすずめが幼い頃に母が作ってくれた、脚が1本欠けた思い出の椅子。逃げるダイジンを捕まえようと、3本脚の椅子の姿で走り出した草太を、すずめが追いかけ……。
九州から東北へ、ダイジンに導かれながら、すずめたちは「戸締まりの旅」を続けていきます。それは、前に進むすずめの成長物語であり、コミカルなラブストーリーであり、壮大なファンタジーでもあります。
映画のキャッチコピーに「扉の向こうにはすべての時間があった。」とありますが、すずめの旅が、過去と現在と未来をつないでいることも最後にわかります。
インタビューで、新海監督は「場所を悼む物語」にしたかったと語っています。かつて栄えていた場所や街が、人が減ったり、災害で失われたりすることが増えたことから、そうした場所を悼む物語として出てきたのが「廃墟」だったそう。
映画で繊細に描かれた廃墟は、むしろ美しかったりドラマチックに見えましたが、「ここはどこだろう」「実在する風景なのかな?」「あ、行ったことがある」と、何度となく心のなかでつぶやきました。
すでにネット上では、モデルとなったであろう土地や建物が数多く紹介されています。
たとえば、キービジュアル的な廃ホテルのドームのモデルは、大分県の豊後森機関庫公園のなかに現存する扇型機関庫と転車台のようです。写真を見れば、映画のシーンがすぐ思い浮かぶほどよく似ています。
玖珠町商工観光政策課の平松崇さんに問い合わせたところ、「『すずめの戸締まり』のモデルではないかとお問合せもいただいておりますが、実際のところは不明です」とのこと。
機関庫を管理するミュージアムの方は、「『すずめの戸締まり』のPVが発表がされた頃から注目が集まり、多くの方がお越しになっていらっしゃいます。私たちにとっては子供のころの遊び場です」と話してくれました。解体の危機を地元の方々が守った幸せな廃墟の例でしょう。
今回、私が感心したのは、この作品が日本の神話をモチーフにしているところでした。『新海誠本』では、主人公・岩戸鈴芽の名前が、アメノウズメノミコト(天鈿女命)から直接のインスピレーションを受けたと記されています。
昨年、宮崎を旅行したとき、天岩戸の話を高千穂峡で聞きました。神代の昔、太陽の神である天照大神が怒り、天岩戸と呼ばれる洞窟に隠れると、世の中が真っ暗になってしまいました。作物は育たず、病気も蔓延しました。
困った八百万の神々が集まり、天照大神を天岩戸から出そうとしたとき、体を張って踊り、天照大神を外に誘い出したのが、アメノウズメノミコトです。天照大神が天岩戸から出ると、世の中は再び明るくなり、平和が戻ったと言われます。
実は、埼玉県熊谷市に、アメノウズメノミコトを祀った「雀(すずめ)神社」があります。創建年代などは不詳ながら、「うずめ」が転じて「すずめ」になったと縁起に書かれているのです。
念のため、雀神社の祭祀に関わっている茂木治男さんにお話を伺うと、やはり、「うずめ」が「すずめ」になったと口伝で伝えられているそう。神話では、岩戸を明けたのが「うずめ」、映画では、ドアを締めるのが「すずめ」……役割は逆ながら、世界の行方に大きな貢献をしたことは一緒です。
雀神社は、鎮守の森にある静かな神社で、ふだんは近所の方々が守っているそうです。今度の休日、聖地めぐりの一環として、ぜひ参拝に行こうと思っています。
横井弘海(よこいひろみ)
東京都出身。慶應義塾大学法学部卒業後、テレビ東京パーソナリティ室(現アナウンス室)所属を経てフリー。アナウンサー時代に培った経験を活かし、アスリートや企業人、外交官などのインタビュー、司会、講演、執筆活動を続ける。旅行好きで、訪問国は70カ国以上。著書に『大使夫人』(朝日新聞社)
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